国産みならぬ星産み。宇宙の生誕から滅亡まで描く物語

 

『スターメイカー』オラフ・ステープルドン著 浜口 稔訳を読了。


ある夜、「ヒースの丘に腰を下ろして」いた主人公は、幽体離脱が起こり、宇宙を旅することとなる。


「本書の目的はわたしの冒険を語ることではなく、わたしが訪れた諸世界に関してなにがしかのイメージを披露することにある」と、作者は記述している。

しかし、霊性にきわめて乏しい一読者であるぼくは、地球のミラーサイトであるような「別地球」、「棘皮人類」「船が知能」を持った「船人類」「共棲人類」「植物人類」などの遭遇に主人公の肩越しから、四方八方キョロキョロするばかり。

 

「光よりも速い」その疾走感が心地よい。ウィリアム・ブレイクの絵をイメージしてしまった。「星間移動」「宇宙放浪」により、神秘体験を重ねていく。そして主人公である「わたし」は、スターメイカー(星の造物主)と出逢う。「精神感応的な交わり」
「至高の瞬間の体験」である。国産みならぬ星産みである。宇宙の生誕から滅亡まで気宇壮大な神話的構造。

 

作者曰く「星々は生きている有機体」であり、精神性を具有した生命体である。「銀河共棲体」に作者はふれているが、そのいわんとするところは、まさしく映画『未知との遭遇』の「We are not alone.」だよね。

 

異星人というとそれは、非地球人を第一義に思ってしまうが、見方を変えれば、地球人も奇異な生命体ということになるわけで。と、すぐいまの非対称化現象に、かこつけてしまうのだが。

 

プラネタリウムで星の生成や銀河の一生などのプログラムを見たことがある人なら、おわかり願えるはずだが、顔を上に向け、しばし、宇宙の悠久さを仮想体験することは、いわば一種のトリップに似ている。みなぽかんと呆けた顔をして会場から出てくるが、いうなれば、この本は、そんな本。

 

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