地球外生命体とのリアルファーストコンタクト

 

 

 

 

『ブラインドサイト』(上)(下)ピーター・ワッツ著 嶋田 洋一 訳を読む。


地球にやってきた「65536個の流星」。それは「異星人による探査機」だった。
なぜ地球に現われたのか。彼らの目的を知るために「宇宙船テーセウス」がテイクオフする。

 

そのクルーがユニーク。脳の半分を切除され、特殊能力を持ったシリ・キートン、吸血鬼のユッカ・サラスティ、四重人格者で言語学者のスーザン・スピンデル、義体化(by『攻殻機動隊』)した生物学者アイザック・スピンデル、平和を愛する軍人アマンダ・ベイツ。

 

宇宙人とか異星人とか言う。「人」がついているからファーストコンタクトで親近感をある程度持つし、ま、ビジュアルは人間に似ていないものもあるが。コミュニケーションも何とか取れるんじゃないかと思う。

 

「宇宙船テーセウス」は巨大な天体ビッグ・ベンと遭遇する。さらにビッグ・ベンを周回している構造物と出会う。そこから流暢な地球人の言語でメッセージが伝えられる。その構造物はロールシャッハと言う。しかし、コミュニケーションが取れない。

 

なぜかティム・バートン監督の『マーズ・アタック!』で火星人が地球人に向かって「フレンズ!」と言っといて光線銃で殺してしまうシーンが浮かんだ。

 

ロールシャッハにロボット兵を派兵するが、帰還しなかった。高濃度の放射線の中、やむを得ず危険を冒してクルーがロールシャッハへ。彼らはブラインドサイト、盲視に陥る。得体の知れない不気味さは、どことなく『クトゥルフ神話』っぽい。

 

エンタメ系SFならユニークな個性のクルーたちで大いに話をふくらませるだろう。まあ、本作でも結構惹かれるんだけど。


本筋は1つがファースト・コンタクトでもう1つが意識だ。ロールシャッハ内でブラインドサイトになるさまは、訳者も挙げているが、やはりレムというのかタルコフスキーというのか『惑星ソラリス』の記憶の海のシーンと重なる。

 

異星体スクランブラーには遺伝子がなかった。バックアップ要員のカニンガムがベイツに説明する。
「生物の多くは形態形成に遺伝子を利用しない」

 

サールの『中国語の部屋』など「意識と知性」に関するアカデミックなネタもたっぷり。

 

「日本版特別解説」でテッド・チャンは本作が「意識はなぜ進化したのかという疑問も提起している」と述べている。

 

ブラインドサイト(盲視)


『中国語の部屋』


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