緑色の髪の少女

 

 

新井素子SF&ファンタジーコレクション 1』新井素子著 日下三蔵編を読む。

 

『甘美で甘いキス 吸血鬼コンピレーション』に収められた『ここを出たら』が新井素子、初読。いいね!と思ったんで、まずは初期作品のアンソロジーを読んでみた。

 

いつか猫になる日まで
宇宙人同士が地球でもめ出す。そんなトラブルに巻き込まれた超能力を持った若者たち。彼らは石神井公園でUFOを見つける。
UFOに入って宇宙人と第一種接近遭遇する。なぜ彼らは戦争をしなければならないのか。若者たちと宇宙人の交流をポップにユーモラスの描いている。みずみずしいなあ。どう言えばいいんだろう。『うる星やつら』のワチャワチャ感につながるような。
この作品は、読まないで抱いていた著者のイメージに近い。
読後感が『となりのヨンヒさん』チョン・ソヨン著などの韓国の女性SF作家の作風にも似ている気がする。しかし、作者19歳のときの作品とは。

 

グリーン・レクイエム
嶋村信彦は子どものときに入山を禁じられていた裏山に入る。そこには古い洋館がありピアノの音が聞こえた。そこで出会った緑色の髪の少女・明日香を忘れることができなかった。大学で植物学者の助手となった彼は喫茶店でピアノを弾く三沢明日香を知る。名前も風貌も似ている。実は明日香だったのだ。

信彦が偶然見つけた洋館の持ち主は岡田という「植物学の権威」。彼の大学でも教鞭をとっていた。岡田は「光合成できる人間」の研究をしていた。彼女には秘密があった。彼女はで光合成できる植物人間に改造されたのかと思ったら、そうではなかった。彼女は異星人だった。しかも進化した植物系。異星人が地球の植物に悪影響を及ぼすおそれが。
教授たちは研究材料として明日香を生け捕りにしようとする。断固阻止する信彦。切ないまでの禁じられた愛。明日香は自殺してしまう。深い悲しみが信彦を襲う。

 

緑幻想
グリーン・レクイエム』の続篇つーか後日譚。行方不明となった信彦、明日香の姉的存在の夢子、松崎教授たちは呼ばれるように明日香の死の真相を求めて屋久島へ行く。そびえ立つ縄文杉。亡くなったと思われた明日香だったが、生きていた。しかも、その形は。彼女は世界樹?
宇宙船のコックピットで見た目は植物でその上超能力を持った「知的生命体」が宇宙船を操縦している図は、想像するだにシュール。めっちゃSFですやん。
悲恋物SFとしてまったく古びていない。脳内には大林宜彦監督の映像らしきものがずっと投影されていた。

 

なぜ作者のあとがきをすべて載せるのか。面白いからだ。この軽妙さ。

さらに、あとがきと編者解説に書かれている著者と編者の若かりし頃の出会いが素晴らしい。剣豪同士が気配だけで「お主できるな」的ものを感じたというのか。同じにおいを感じたというのか。そっか。新井素子氷室冴子の出現でコバルト文庫は覚醒したんだ。

 

soneakira.hatenablog.com

 

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