ナイン・ストーリーズ―朝倉かすみがテーマを「スカート」に選定、指名した9人の作家

 

 

『スカートのアンソロジー 朝倉かすみリクエスト! 』を読む。
こんなアンソロジーが出ていることを知らなくて読んでみる。
句会や歌会の小説版といったところだろうか。

面白くってあやうく下車駅を乗り過ごすところだった。
こんな作品の競演。7篇だけ、さくっと紹介。

 

『明けの明星商会』朝倉かすみ
高卒、短大卒、大卒とキャリアは異なるが、同期入社の3人の女性。2人は辞めたが、最後まで勤めていた「コマちゃん」が癌で亡くなる。彼女の住んでいた部屋で形見分けが行われる。過る彼女との思い出や会社のこと。そこにあったスカートは?

 

『そういうことなら』佐原ひかり著
「制服の自由化が始まった高校」。女子はズボンがはけると大歓迎。で、スカート姿の男子・水谷が登場。「わたし」の元カレ。なぜ?成り行きで彼にスカートをつくることになる。

 

『くるくる回る 』北大路公子著
まもなく70歳になるマチコ。エレベーターのない団地での一人住まいは年々苦痛になってきた。ある日、亡くなった息子を騙る電話が。話を聞くうちに不憫に思い、振り込もうかと。その寸前で制止してくれた年下の友人のナナヨ。保険のセールスをしている。
団地の階段で足を踏み外してスカート姿で転倒。救急車の世話になる。近所の小さな家が売りに出されている。ナナヨはマチコにそこを終の棲家にしないかと持ち掛ける。


『スカートを穿いた男たち 』佐藤亜紀
佐藤亜紀の短篇?期待して読むと副題が「トマス・アデリン「黒海沿岸紀行」抜粋」とある。装飾を施された重たいスカートが履けるのは屈強たるおのこ。しかもおのこが愛するのはおのこという。自然界でオスが派手なのはメスにアピールするためなのに。
目くるめくオルタナ・ヒストリー。

 

『スカート・デンタータ 』藤野可織
朝の満員電車、突如、男の手首がごろり。それはスカートの中に手を入れた痴漢への報復。切り落とされたのではなく、噛み切られたのだ、しかもスカートに。歯のついたスカートをはいて女性たちのリベンジがはじまる。


『半身 』吉川トリコ
有原きよみは、人気子役だった。1人娘の鳴海にはスカートの時には「下着が見えないようにオーバーパンツかスパッツを穿かせる」。彼女が18歳の時、映画の助監督をしていた男から連絡がある。鳴海を子役に起用したいと。夫は、反対する。しかし、押し切る。離婚を考える。母親に子役時代に稼いだギャラを請求する。母親は彼女の稼ぎでマンションを購入し、父親ではない男と暮らしていた。

 

『本校規定により 』中島京子
「生活指導担当ナカムラタメジ」。彼にとってスカートは丈をチェックするものだった。不良少女「ウダガワサツキ」のスケバンルックやルーズソックスはどこがよいのか理解できなかった。校長となったとき、「スカートの下にジャージをはいた」埴輪ルックも注意はしたものの。トランスジェンダーの女生徒にも面食らう。生活指導ひとすじの人生。棺に制服と定規。


人気blogランキング