知沸き、肉躍る―レムの著作では、読了スピード記録達成

 

 

『インヴィンシブル』 スタニスワフ・レム著 関口時正訳を読む。
新訳が良いからなのだろう、冒頭から吸い込まれ、ぼくもインヴィンシブル号に乗船していた。

 

消息を絶ったコンドル号を探しにインヴィンシブル号は惑星レギスⅢへ。
そこは、「砂漠の惑星」だった。砂漠といっても実体は「金属層」だった。
かつては都市と思われる「廃墟」が広がる。

 

先遣隊によりコンドル号は発見されたが、謎だらけ。
内部に入ると死屍累々のシーンが目に入る。
食料や水の備蓄もある、酸素も十分にある。なのに、ミイラ化した屍体も。

凍眠室にいた乗組員も亡くなっていたと思えたが、
彼らに「電気的インパルス」を与えるとヘッドフォン越しに声が聴こえる。

コンドル号の「航海日誌」にはおびただしい「虫」が出現、襲われたことが記されていた。

 

そして突如、「雲」の来襲を受ける。雷鳴が轟き、「洪水のような大水」が。
「雲」が去った後には、「虫」、「小さな黒い金属の粒が大量に落ちていた」。

「雲」は「金属粒子で構成され、均一の中心を持つ、遠隔操縦された、一種の懸濁物質」ではないかと推測。

 

金属の「虫」たちの集合体が巨大な「雲」となって凄まじい攻撃力を持つ。
異星人。人ではないけど。
イワシの群れやムクドリの群れ、シマウマの群れのような。
それは彼らが生き延びるための進化系だった。

 

このあたりの独創的な発想が作者ならでは。

おいおい、なんてファースト・コンタクトなんだ。

「雲」と《キュクロプス》とのド派手な交戦が始まる。

 

「《独眼巨人(キュクロプス)》というニックネームで呼ばれていたその機械」
「黒い竜巻、雨裂谷の壁、ジャングル―すべてが瞬時になくなった。―略―《キュクロプス》が反物質砲を発射したのだった」

 

反物質砲」だって。「波動砲」を思い出す。

しかし、インヴィンシブル号の旗色は悪く、行方のわからない乗組員が続出する。

 

意を決してロアンが単身、捜索に出る。この後半のクライマックスシーンは、ワクワクドキドキの連続。あたかもランボーや『ダイ・ハード』のジョン・マクレーン刑事あたりをイメージしてしまった。


冒険活劇とハードSFの高次元での両立。ってことかな。

 

登場人物は国籍はさまざまだが、男ばっか。
今ならロアンはきっと女性キャラクターで書くかもしれないと思った。

 

些末なことだが、オートマトン(自動機械)とロボットは、どう違うのだろう。

 

それにしても、レムの描くロケットや各種マシーンなどのメカニカルな描写、航海シーンは、ほんと、カッコイイ。


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