酔いどれ天使の詩―最後のビートニク

 

 


『ここに素敵なものがある』リチャード・ブローティガン著 中上哲夫訳を読む。

 

第一詩集『リチャード・ブローティガン詩集-突然訪れた天使の日-』リチャード・ブローティガン著 中上哲夫訳を全面新訳、おまけの詩をつけたものだとか。

 

久々に読んだが、ああ、いいなと思う。訳者もケルアック、ギンズバーグなどのビート・ジェネレーションに強い影響を受けているそうで、いい訳。

 

村上春樹がデビューしたとき、カート・ヴォネガットっぽいとかいわれたけど、この詩集を読むと、ブローティガンにも影響されたことがなんとなくわかる。

 

ライト・ヴァースのようでもあり、自由律短歌や自由律俳句のようでもある。昨今流行の若い人のつくる短歌のようでもある。詩の連なりが、固まって数々の小説になっていったんだ。

 

アメリカの鱒釣り』でヒットを飛ばしたが。元々は詩人だったわけで。訳者によると、短い詩はアメリカでは受けないと。

 

で、後年は酒に溺れる。俳人種田山頭火やシンガーソングライター、トム・ウェイツと、どっちが酒飲みだろう。

 

日本に1ヵ月あまり滞在していたことや日本人女性との恋愛も少々知っていたが、寺山修司と面識があるとは思わなかった。訳者あとがきに寺山の葬儀に参列したときの詩「夜に流れる河」が載っているが、最後の一行に、自らの死を暗示している。

 

表紙はてっきり松本大洋のイラストレーションかと思ったら、違った。高橋昭子という人形作家によるものだった。ネットで作品を見たら、なかなか、いい感じだった。


2つの詩を引用。

 

「いい出来だ」と彼はいった、そして

 

「いい出来だ」と彼はいった、そして
そのドアから出ていった。なんの
出来なのだ?ぼくらはその男に一度もあったことは
なかった。ドアなんかなかったのだ。」

 

なぜか、コッパードの短篇を思わせる。


ぼくらは十一時のニュースだった

 

ぼくらは十一時のニュースだった、
ぼくらが愛し合っている間、
ぼくら以外の世界は地獄にころげ落ちていたからだ。」

 

2023年11月のテレビからは、ウクライナガザ地区の紛争シーンが流れている。なぜか、佐野元春の歌詞を想像させる。


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