ふらふらふわふわフラヌール―素敵な詩歌の華麗ド・スコープ

詩歌探偵フラヌール


『詩歌探偵フラヌール』高原英理著を読む。

 

猫探偵は迷い猫を探す。私立探偵はもし依頼人から失踪者調査を頼まれたら探す。
詩歌探偵、メリとジュン。毎回不思議な場所や不思議な人と出会って古今東西イカした詩歌を見つけ出す。全8篇の短篇集。主人公がアリスだったら『詩歌の国のアリス』になるけど。

 

まずは、「フラヌール」について引用。

「フラヌールはベンヤミンの『パサージュ論』に出て来る言葉で日本語にすると「遊歩者」」

乱歩の『屋根裏の散歩者』は、『屋根裏のフラヌール』になるってわけ。

以下適宜感じたことを。

 

萩原朔太郎の『月に吠える』に入っている「殺人事件」という詩がクール。

 

ランボーの『地獄の季節』の訳はやっぱり小林秀雄のがカッケー。


〇エミリ・ディキンスンの他の詩が読みたくなった。


〇きのこの旅、略して『きの旅』。紹介されているきの短歌(紫宮透、石川美南)、きの俳句(高浜虚子、桂信子、鷹羽狩行)がチャーミング。何せ作者は『日々のきのこ』というきのこ文学の金字塔、違うか菌字塔をものしているのだから。


〇ポオの代表的な詩「大鴉」。文語体の日夏耿之介訳にぼくも一票投じる。


〇古いもの好きと思われるかもしれないが、現代詩からは最果タヒの『約束』が。


〇最後の作品に登場したのが左川ちかの詩。お、ラスボス登場か。作者が解釈する左川のモダニズムな詩の世界。彼女が翻訳を手がけたヴァージニア・ウルフにも通底するものがある。

 

ゆるい文体が、どことなく長新太のナンセンス絵本に似ていると思った。なんとなく稲垣足穂にも。

 

本来なら「私の好きな詩・好きな短歌」とか「名詩歌入門」とかなんだけど、そこは作者は、詩歌探偵、メリとジュンを狂言回しにして不可思議な短篇仕立てにした。

 

漫画にするなら誰がいいかな。高野文子佐々木マキ、西村ツチカ…

 

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