好きな詩集、ありますか。 すき間時間に読む「幸せ」ならぬ「詩あわせ」

 

 

『引き出しに夕方をしまっておいた』ハンガン著 きむふな訳 斎藤真理子訳を読む。

twitterなどのSNSと俳句や短歌は親和性が高い。でも読む人よりも書く人の方が多いかもしれない。詩は、どうだろう。

 

現代詩=難解というレッテルを貼られて幾星霜。でも最果タヒなど若い女性詩人たちの台頭で印象は変わっただろうか。日本のラッパーたちには詩じゃん!と思わせるリリックの書き手もいる。モーメント・ジューンとか。

 

詩人でもある作家ハンガン。描かれる世界は当然通底している。女性の私、母の私、娘の私。ケアとキュアそしてレジリエンス。でも、詩の方が濃度が濃く、深い。


乱暴に言うと小説は膨らますものだが、詩は削って削って削って。省略と抑制。もっと文字数が少ない俳句や短歌の方が省略と抑制は、求められるが。

 

良質の酒米が削られて純米大吟醸の銘酒が醸されるように。個人的にはもったいないんで純米酒派だけど。

 

荒川洋治が述べているように小説はすべて書かれたものを読む。詩は時には読み手にも書き手と同じ位置に引きずりおろす。ある意味、読み手に下駄を預ける。だから繰り返し読める。むしろ繰り返し読むことで新しい発見や感動がある。

 

この詩集には突き刺さる一行が大杉(懐かしの2ちゃん用語)。ランダムに引用。

 

「ごはんを食べなくちゃ」
(「ある夕方遅く 私は」)


矢野顕子の「ごはんができたよ」が浮かんだ。恋人または夫とすったもんだの挙句、自分から別れを切り出す。途端に空腹に襲われる。米を研ぎ、炊飯器を早炊きモードで炊き立てのほかほかごはんをたらふく食べる。心に復活ランプがこうこうと灯る。

「涙がやってくるとき 私の体は空っぽの甕になる」
(「涙がやってくるとき 私の体は空っぽの甕になる」)

 

「ある種の悲しみは水気がなくて固くて、どんな刃でも研磨できない原石のようだ」
(「いくつかの物語12」)

 

「死んだばかりと思っていた黒い木が茂っていくのを見つめていた」
(「夜の素描5」)


ぽっこり空いた時間にランダムに一篇読もう。意外と缶チューハイの当てにいいかも。

♪ スマートフォン閉じて 詩の本で感じて ♪

 

人気blogランキング