完全お気楽人生マニュアル―生きづらさを覚えているあなた、生き方ベタなあなたへ

人間関係を半分降りる ――気楽なつながりの作り方 作者:鶴見済 筑摩書房 Amazon 『人間関係を半分降りる-気楽なつながりの作り方-』鶴見済著を読む。 人は一人では生きられないといわれる。確かに、そう思う。でも、隣近所や友人、親兄弟、会社の上司・同僚…

「天井裏妄想」を読み解く

屋根裏に誰かいるんですよ。 都市伝説の精神病理 (河出文庫) 作者:春日武彦 河出書房新社 Amazon 『屋根裏に誰かいるんですよ。-都市伝説の精神病理-』春日武彦著を読む。 まず、江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』からはじまる。他人の私生活をこっそり覗き…

「身体の欲望」が「生命のよろこび」を掠奪している

無痛文明論 作者:森岡 正博 トランスビュー Amazon 『無痛文明論』森岡正博著を読む。 痛みは麻酔で、寒さや暑さはエアコンディショナーで、糞便は水洗トイレで、死は病院で、死体は火葬場で、ゴミは所定の曜日・場所に置けば、いつの間にか清掃局が片づけて…

ホラーの宝石箱やあ

20世紀の幽霊たち (小学館文庫) 作者:ジョー ヒル 小学館 Amazon 『20世紀の幽霊たち』ジョー・ヒル著 白石 朗ほか訳を読む。 もし、怖い小説で最も好きな作品を一つだけあげよと問われたら、そうさな…ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』をあげる。映像だ…

神のみぞ知る(God Only Knows)

モナドの領域(新潮文庫) 作者:筒井康隆 新潮社 Amazon 『モナドの領域』筒井康隆著を読む。 「河川敷で若い女性の右腕が」見つかる。捜査に当たる警察。そのそばにある「アート・ベーカリー」では、美大生のアルバイトがつくる動物パンが人気だった。栗本…

悔いのない人生を生き切るために

生命学に何ができるか―脳死・フェミニズム・優生思想 作者:森岡 正博 勁草書房 Amazon 『生命学に何ができるか 脳死・フェミニズム・優生思想』森岡正博著を読む。 いわゆる学者の書くものは、大概が、小難しいロジックをデコレートしたもので、学説の引用の…

その瞬間、火かき棒を手にしたウィトゲンシュタイン

ポパーとウィトゲンシュタインとのあいだで交わされた世上名高い一〇分間の大激論の謎 (ちくま学芸文庫) 作者:エドモンズ,デヴィッド,エーディナウ,ジョン 筑摩書房 Amazon 『ポパーとウィトゲンシュタインとのあいだで交わされた世上名高い一〇分間の大激論…

あの頃に帰りたい―追憶の1989年

ツアー1989 (集英社文庫) 作者:中島 京子 集英社 Amazon 『ツアー1989』中島京子著を読む。 時はバブル末期の1989年、まだ英国領だった香港への不可思議なツアー「迷子つきツアー」に参加した女性をめぐる話からスタートする。そのツアーを調べているフリー…

「言語哲学の源流」フレーゲ→ラッセル→ウィトゲンシュタイン

言語哲学がはじまる (岩波新書) 作者:野矢 茂樹 岩波書店 Amazon 『言語哲学がはじまる』野矢茂樹著を読む。 「言語哲学の源流を形作った」フレーゲ、ラッセル、ウィトゲンシュタイン(『論理哲学論考』を発表した前期ウィトゲンシュタイン)。この3人の言…

衝撃の笑劇―1968年に刊行された小説の今日性

スミヤキストQの冒険 (講談社文芸文庫) 作者:倉橋由美子 講談社 Amazon 『スミヤキストQの冒険』 倉橋由美子著を読む。 スミヤキ党員Qは、密かに島にあるH感化院に潜入する。情報収集にあたる。主事と面接するが、スミヤキストであることがバレていた。工作…

星は、なんでも知っている

せちやん 星を聴く人 (講談社文庫) 作者:川端 裕人 講談社 Amazon 『せちやん 星を聴く人』川端裕人著を読む。 ふう〜っ。読み終えてから、ため息をついた。甘酸っぱいなあ。あの日に帰りたい。ではないが、ふと、仲の良かった友人は、どうしているんだろう…

反骨はトン骨よりも、エネルギッシュである―「どくいり きけん よんたら 死ぬで」 ウソ!

突破者―戦後史の陰を駆け抜けた50年〈上〉 (幻冬舎アウトロー文庫) 作者:宮崎 学 幻冬舎 Amazon 突破者―戦後史の陰を駆け抜けた50年〈下〉 (幻冬舎アウトロー文庫) 作者:宮崎 学 幻冬舎 Amazon 『突破者―戦後史の陰を駆け抜けた50年』(上)(下)宮崎学著を…

ガーリッシュ・ホラーよりもフェミニズム・ホラーと言った方が的確かも

わたしたちが火の中で失くしたもの 作者:マリアーナ・エンリケス 河出書房新社 Amazon 『わたしたちが火の中で失くしたもの』マリアーナ・エンリケス著 安藤哲行訳を読む。 訳者あとがきによると作者は作家になる前、ジャーナリストだったそうだ。事件や問題…

脱・家族の住宅

家族を容れるハコ 家族を超えるハコ 作者:上野 千鶴子 平凡社 Amazon 『家族を容れるハコ 家族を超えるハコ』上野千鶴子著を読む。 「住宅という『ハコ』と家族という『現実』がどうやらズレてきているらしい」。なのに、いまだに「nLDK」がデファクトス…

「わたしがドードー鳥なら、ケイナちゃんは孤独鳥(ソリテア)」

ドードー鳥と孤独鳥 作者:川端裕人 国書刊行会 Amazon 『ドードー鳥と孤独鳥』川端裕人著を読む。 ドードー鳥について著者は『ドードーをめぐる堂々めぐり』を書いた。これが、ノンフィクションなら、本作は、同じ素材で小説に仕立てたもの。同じ材料で肉じ…

疎開と疎外そしてそこからの脱出

東京少年 (新潮文庫) 作者:信彦, 小林 新潮社 Amazon 『東京少年』小林信彦著を読む。まるで山下達郎の楽曲のようなタイトル。 第二次世界大戦で日本が敗色濃厚となった頃、東京・両国から、埼玉の山奥へ集団疎開することになった少年と弟。ふだんの小学校で…

かくも気高く、切ないプラトニック・ラブ

無垢の時代 (岩波文庫 赤345-1) 作者:イーディス・ウォートン 岩波書店 Amazon 『無垢の時代』イーディス・ウォートン著 河島弘美訳を読む。 舞台は、1870年代、華やかりし、ニューヨークの上流社会。家の格、出自、現在の羽振りの良さなどでマウントの…

怖れと慄(おののき)き―うらぶれて、うらめしや

廃屋の幽霊<新装版> (双葉文庫) 作者:福澤徹三 双葉社 Amazon 『廃屋の幽霊』福澤徹三著を読む。 ホラー小説というと、おぞましいものを、ついイメージしがちだが、それはホラーの部分であって、やはり、小説の部分がしっかりブンガクしていないと、物足りな…

地図にも載っていない小さな国の、知らない話

異国伝 作者:佐藤 哲也 河出書房新社 Amazon 『異国伝』佐藤哲也著を読む。 「あ」の「愛情の代価」から「ん」の「ンダギの民」まで、誰も知らない国の短い物語が、書き記されている。五十音ごとのタイトルが決まってから、書き出したのだろうか。それとも、…

脱「無料貸本屋」―道具としての図書館

未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― (岩波新書) 作者:菅谷 明子 岩波書店 Amazon 『未来をつくる図書館 ニューヨークからの報告』 菅谷明子著を読む。 行きつけの図書館はありますか。あると答えた方へ。図書館は何をするところだと思いますか。読…

メディアの特性を理解せずに、現代を真に理解することはできない

メディア・リテラシー―世界の現場から (岩波新書) 作者:菅谷 明子 岩波書店 Amazon 『メディア・リテラシー ―世界の現場から―』菅谷明子著を読む。 いま、日本の教育に欠けているものは、何だろう。その大きなものの一つが、メディア・リテラシーである。 メ…

カメ人間、キリン人間、クジラ人間…ビジュアルはショッキングだが、読むと知らないことばかり

カメの甲羅はあばら骨 ~人体で表す動物図鑑~ (SBビジュアル新書) 作者:川崎 悟司 SBクリエイティブ Amazon 『カメの甲羅はあばら骨-人体で表す動物図鑑-』川崎悟司著を読む。 『恐怖の正体-トラウマ・恐怖症からホラーまで-』春日武彦著で取り上げられ…

「ひとりの人間を一冊の書物のように読もうとするこころみ」

ヴァージニア (新潮文庫) 作者:倉橋 由美子 新潮社 Amazon 『ヴァージニア』倉橋由美子を読む。 読み直し、倉橋由美子の二冊目。 新潮文庫の倉橋作品は背表紙が緑色。当時のガールフレンドの本棚にあったし、妻の本棚にも、あった。ジャズ喫茶で煙草をくゆら…

詩爆弾は、大脳皮質で炸裂する

左川ちか詩集 (岩波文庫 緑232-1) 岩波書店 Amazon 『左川ちか詩集』 左川ちか著 川崎賢子編を読む。 中学の時、現代国語の教科書に西脇順三郎の詩が載っていた。そのモダンさ、日本語の豊饒さに眼をひらかされた。新潮文庫から出ていた西脇の詩集を買って、…

恐怖を精神分析すると

恐怖の正体-トラウマ・恐怖症からホラーまで (中公新書 2772) 作者:春日 武彦 中央公論新社 Amazon 『恐怖の正体-トラウマ・恐怖症からホラーまで-』春日武彦著を読む。 まずは、恐怖の定義。 「恐怖の定義 ①危機感、②不条理感、③精神的視野狭窄―これら三…

なんてこった!このご時世に、ど真ん中の恋愛小説を読もうとは!

最愛の (集英社文芸単行本) 作者:上田岳弘 集英社 Amazon 『最愛の』上田岳弘著を読む。 コロナ禍なんて随分昔のことのように思えるが、まだ、つい、数年前のことだ。三密を避けるため、企業は社員を在宅勤務、リモートワークさせ、会議はWEB会議になった。…

デビュー作。その出来に圧倒される

パルタイ (新潮文庫) 作者:由美子, 倉橋 新潮社 Amazon 『パルタイ』倉橋由美子著を読み直す。 大学生の時、好きな作家は、女性では、金井美恵子と森茉莉、そして倉橋由美子だった。この作品集、読んでいたはずなのに、まったく読めていなかった。でも、それ…

たった6人を辿れば、世界中の人と知り合いだ

複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線 作者:マーク・ブキャナン 草思社 Amazon 『複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線 』マーク・ブキャナン著を読む。 数字的にはたった6人を辿れば、世界中の人と知り合いだという狭い世界、「ス…

友がき 海がき 川がき

今ここにいるぼくらは (集英社文庫) 作者:川端 裕人 集英社 Amazon 『今ここにいるぼくらは』川端裕人著を読む。 大昔の著者のブログで彼自身は現在SF作家ではないが、SFの土壌から作品が生まれていると書いていた。 この作品は「博士」と呼ばれる小学生と友…

正しくは、『ブローティガン東京日詩 1976.5~6』ではなかろうか

ブローティガン 東京日記 (平凡社ライブラリー) 作者:ブローティガン,リチャード 平凡社 Amazon 『ブローティガン東京日記』リチャード・ブローティガン著 福間健二訳を読む。 ブローティガンが日本にいたのは「1976年5~6月、1ケ月半」だそうだ。旅にして…