2021-01-01から1年間の記事一覧

再読してピンと来た

デス博士の島その他の物語 (未来の文学) 作者:ジーン ウルフ 国書刊行会 Amazon 「デス博士の島その他の物語」ジーン・ウルフ著を再読してみた。来た来た、ピンと。なぜ初読のときは、脳内映像が映し出されなかったのだろう。 小説を読むときと、人文系を読…

なぜもっと早く読まなかったんだろう。まだまとまってはいないんだけど、見切り発車で

戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫) 作者:スヴェトラーナ アレクシエーヴィチ 岩波書店 Amazon 『戦争は女の顔をしていない』スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著 三浦みどり訳を読む。 ソ連は第二次世界大戦(独ソ戦)に「百万人をこえる女性が従軍…

川端康成、未完の「最後の連載小説」がすさまじくて

たんぽぽ (講談社文芸文庫) 作者:川端 康成 講談社 Amazon 『たんぽぽ』川端康成著を読んだ。 未完の「最後の連載小説」(雑誌『新潮』)とかで、読みはじめた。すげえ。のっけから気ちが○や気ちが○病院のオンパレード。 眼前の人の身体が見えなくなるという「…

デジャビュ―『<野宿者襲撃>論』から『排除の現象学』へ

「野宿者襲撃」論 作者:生田 武志 人文書院 Amazon 排除の現象学 (ちくま学芸文庫) 作者:赤坂 憲雄 筑摩書房 Amazon 『<野宿者襲撃>論』生田武志著を読み出す。村上春樹の『パン屋襲撃』に似たタイトルだが、きわめて今日的なテーマでもあり、「日雇労働者…

人工知熊に乗りた-い

どーなつ 作者:北野 勇作 アドレナライズ Amazon 「クラゲ」(『クラゲの海に浮かぶ舟』)、「カメ」(『かめくん』)、「ザリガニ」(『ザリガニマン』)ときて、今度は熊だ。でも、題名は『どーなつ』だけど。この物語の世界は、ポスト・ウォー。どんな戦…

きみにメロメロ(Kimi Knee Mero Mero)

クレールの膝/背中の反り (エリック・ロメール・コレクション) [DVD] ジャン=クロード・ブリアリ Amazon 夏なんで、エリック・ロメールの映画『クレールの膝』でも見てヴァカンス気分ざんす。 ある女性と生きてゆこうと決めた男性が、別の女性と出会い心動…

もみほぐされた言葉が頭と心をもみほぐす

言葉をもみほぐす 作者:赤坂 憲雄,藤原 辰史,新井 卓 岩波書店 Amazon 『言葉をもみほぐす』赤坂憲雄著 藤原辰史著を読む。 民俗学者と歴史学者との往復書簡集。対談ではなく手紙のやり取り。お互いの表情などはわからないが、文面からの言葉を読み、考える…

奇怪な神・機械が「最大の戦争」を引き起こす

絶対製造工場 (平凡社ライブラリー706) 作者:カレル チャペック 平凡社 Amazon 『絶対製造工場』カレル・チャペック著 飯島周訳を読む。 「大企業メアスの社長ボンディ」は、画期的な発明を売却したいという新聞広告を目にする。依頼主は「マレク技師」。大…

AIはどこまで来ているんだろう

ポロック生命体 作者:秀明, 瀬名 新潮社 Amazon 『ポロック生命体』 瀬名秀明著を読む。久しぶり。一時期、作者のロボティクス関連本を読み漁った。それ以来かも。AIがテーマの4つの短篇集。 実際、AIはどこまで進化している?AIって本当に人間を超えるの?読…

ヘンリー・ジェイムズの長篇小説デビュー作。そのできばえ、完成度に舌を巻く

ロデリック・ハドソン (講談社文芸文庫) 作者:HENRY JAMES 講談社 Amazon 犬や猫が降る雨(It's raining cats and dogs)という英語の言いまわしを思い出すほどの雨。 『ロデリック・ハドソン』ヘンリー・ジェイムズ著 行方昭夫訳を読む。長篇小説デビュー作。…

かわいい、こわい、かわこわい

怪談えほん (2) マイマイとナイナイ 作者:皆川 博子 岩崎書店 Amazon 『マイマイとナイナイ』皆川博子作 宇野亜喜良絵 東雅夫編を読む。 作者の短篇、掌編小説が素晴らしいのは知っていた。こんな絵本を出していたとは。しかも画家が宇野亜喜良。バタくさい…

作家大爆発

日本文学盛衰史 (講談社文庫) 作者:高橋 源一郎 講談社 Amazon 『日本文学盛衰史』高橋源一郎著を読む。 『一億三千万人のための小説教室』のレビューの続編なんで、興味のある人は、面倒でもそこからお読みいただけると幸いです。 と、いうわけで評判の高い…

続・眩暈のする読書―めくるめく思いでページを捲る

山の人魚と虚ろの王 作者:山尾悠子 国書刊行会 Amazon 『山の人魚と虚ろの王』山尾悠子著を読む。 冒頭の数行を読む。作者の世界に吸い寄せられる。 その文体。漢字を多用した文。思いつくままに挙げるならば、泉鏡花、渋澤龍彦、金井美恵子、須永朝彦、葛原…

ライトじゃないノベル

新井素子SF&ファンタジーコレクション3 ラビリンス〈迷宮〉 ディアナ・ディア・ディアス 作者:新井 素子 柏書房 Amazon 『新井素子SF&ファンタジーコレクション3 ラビリンス<迷宮> ディアナ・ディア・ディアス』 新井素子著 日下三蔵編を読む。 『扉を開けて…

『創発  蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク』メモメモ

創発―蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク 作者:スティーブン ジョンソン ソフトバンククリエイティブ Amazon オリンピック。スケボー少女たちのかわいらしさにモエる。 『創発―蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク』スティ…

自分というクランケ

壊れた脳 生存する知 (角川ソフィア文庫) 作者:山田 規畝子 KADOKAWA Amazon 『壊れた脳生存する知』山田規畝子著を読む。 作者の病歴。「大学二年生のときの『一過性脳虚血発作』、大学六年生のときの『モヤモヤ病』による脳出血、三十四歳のときの脳出血と…

ぼくたちの好きなヒッチコック

ヒッチコック×ジジェク 河出書房新社 Amazon 女性柔道選手ではないソネアキラです。長いことコピーライターをしています。ほぼ開店休業状態ですが。 『ヒッチコック×ジジェク』ジジェク編というものを、行き帰りに読んでいて、生き返ります。 ヒッチコック本…

かわいいバルト―自伝バラバラ事件

ロラン・バルトによるロラン・バルト 作者:ロラン・バルト みすず書房 Amazon 『ロラン・バルトによるロラン・バルト』ロラン・バルト著 石川美子訳を読む。 『彼自身によるロラン・バルト』佐藤信夫訳が旧訳。こちらが新訳。どうせなら新訳で再読してみるこ…

システムキッチンのルーツは「20世紀前半のドイツ」だった

ナチスのキッチン 作者:藤原 辰史 水声社 Amazon 『ナチスのキッチン 「食べること」の環境史』藤原辰史著を読む。 作者によると「日本の公団のダイニングキッチン」も「システムキッチン」もルーツは「20世紀前半のドイツにたどり着く」。 ドイツ人の主婦は…

「奇想文学の名手」とは言い得て妙

日本SFの臨界点 中井紀夫 山の上の交響楽 (ハヤカワ文庫JA) 作者:中井 紀夫 早川書房 Amazon 『日本SFの臨界点 中井紀夫 山の上の交響楽』中井紀夫著 伴名練編を読む。 作者は、伴名練曰く「ボルヘスやカルヴィーノ、マジックリアリズムの影響を受け」たそう…

『ピンク・シャドウ』を聴きながら

『恐怖 アーサー・マッケン傑作選』平井呈一訳を読んでも涼しくならない。で、冗談伯爵の『ピンク・シャドウ』を聴いている。名曲だ。YouTubeの動画を貼るんで聞き比べてほしい。 www.youtube.com 『ピンク・シャドウ』冗談伯爵ぼったくり男爵ならぬ冗談伯爵…

探偵は古書店にいる

愛についてのデッサン ――野呂邦暢作品集 (ちくま文庫) 作者:野呂 邦暢 筑摩書房 Amazon 『愛についてのデッサン――野呂邦暢作品集』野呂邦暢著を読む。 表題作に特化したレビュー。 主人公は佐古啓介。元編集者、現在は古本屋の二代目店主。彼は父親が亡くな…

「第13あかねマンション」の怪って…ホラーじゃないのに。たくもう!

新井素子SF&ファンタジーコレクション2 扉を開けて 二分割幽霊綺譚 作者:新井 素子 柏書房 Amazon 『新井素子SF&ファンタジーコレクション2 二分割幽霊綺譚 扉を開けて』新井素子著 日下三蔵編を読む。以下2篇の感想や感想や感想やあらすじを。 『扉を開けて…

ふと、大江健三郎の短篇集が読みたくなって

僕が本当に若かった頃 (講談社文芸文庫) 作者:大江 健三郎 講談社 Amazon 『僕が本当に若かった頃』 大江健三郎著を読む。 初期の作品である『奇妙な仕事』や『死者の奢り』を読んだときは、衝撃を受けた。大江作品イコール重厚長大のイメージが強いが、『奇…

私は何人(なんぴと)とて束縛できる。でも、束縛はされない

聖母 作者:レオポルト・フォン ザッハー=マゾッホ 中央公論新社 Amazon 『聖母』L.v.S=マゾッホ著 藤川芳朗訳を読む。 ヒロインは―あるいはマドンナか―異端宗派の女性教祖マルドナ。その美貌とグラマラスな肢体はカルト宗教の広告塔として布教に光を与える。…

チベット史が学べる、でも、活劇としても読める。不謹慎かもしれないが

白い鶴よ、翼を貸しておくれ 作者:ツェワン・イシェ・ペンバ 書肆侃侃房 Amazon 『白い鶴よ、翼を貸しておくれ-チベットの愛と戦いの物語-』ツェワン・イシェ・ペンバ著 星泉訳を読む。 1925年、新婚ほやほやのアメリカ人宣教師スティーブンス夫妻が、はる…

『悪魔に仕える牧師』って誰?

悪魔に仕える牧師 作者:リチャード・ドーキンス 早川書房 Amazon 『悪魔に仕える牧師』リチャード・ドーキンス、読了。 タイトルは、「ダーウィンが『進化論』を発表したら、『悪魔に仕える牧師』」といわれ、何されるかわからないから、なかなか『種の起源…

マゾッホとは思えないほどのハッピーエンドやほのぼのとした話もある

ユダヤ人の生活―マゾッホ短編小説集 作者:L・v・ザッハー=マゾッホ 柏書房 Amazon 『ユダヤ人の生活―マゾッホ短編小説集』 L・V・ザッハー=マゾッホ著 中澤 英雄訳を読む。 昔、ロンドンで山高帽に長いアゴヒゲ、黒ずくめの男性集団を見かけた。異様に思えた…

「灰色の脳細胞」を持つカイゼル髭のベルギー人

ポアロ登場 (クリスティー文庫) 作者:アガサ・クリスティー,真崎 義博 早川書房 Amazon 『ポアロ登場』アガサ・クリスティー著 真崎義博訳を読む。 「名探偵エルキュール・ポアロ」の短篇集。ハンプティ・ダンプティのような体躯の小男のベルギー人。滔々と…

雨降りだから『ロリータ』でも読んでみよう

ロリータ (新潮文庫) 作者:ウラジーミル ナボコフ 新潮社 Amazon 憂鬱な梅雨。『ロリータ』ウラジミール・ナボコフ著 若島正訳を読んだ。 そう、ロリータ・コンプレックス、ロリコンの語源となった作品。この言葉だけが独り歩きしているが、先日も渋谷で久々…