『マイマイとナイナイ』皆川博子作 宇野亜喜良絵 東雅夫編を読む。
作者の短篇、掌編小説が素晴らしいのは知っていた。
こんな絵本を出していたとは。
しかも画家が宇野亜喜良。
バタくさい世界が、どんぴしゃり(連続死語か)。
ダークファンタジーというよりも
かわいい、こわい、かわこわい。
マイマイという少女に、ある日、小さな弟・ナイナイができた。
ナイナイはマイマイ(カタツムリ)の背に乗っていた。
両親が気がつかないほど小さい。彼女は胡桃の殻に弟を入れた。
「白い馬に蹴られて右目が壊れた」。
マイマイは眼の代わりに胡桃を入れた。
胡桃の中のナイナイは幽閉されたのか。
彼は怖ろしい夜の夢を引き込む。
当然、マイマイも怖ろしい夜の夢を見る。
ナイナイは夜の夢に胡桃の殻から解放される。
ところが、マイマイは夜の夢に胡桃の殻に心を幽閉される。
マイマイのこころは胡桃の殻に乗って
あてどもない救いへの旅に出る。
一種の貴種流離譚風。もしくは、皆川博子版『眼球譚』といってもいい。
オスカー・ワイルドの『幸福な王子』は青いサファイヤでできた眼を貧しい人々に差し出した。
アーモンドアイ、切れ長の目はアジアンビューティの象徴。
ふと、澁澤龍彦の『胡桃の中の世界』を思い出した。
作者の100字小説集とか読みたいなあ。