2022-01-01から1年間の記事一覧

「心には表面しかない(The Mind is Flat)」。その裏は?

心はこうして創られる 「即興する脳」の心理学 (講談社選書メチエ) 作者:ニック・チェイター,高橋達二,長谷川珈 講談社 Amazon 『心はこうして創られる-「即興する脳」の心理学-』ニック・チェイター著 高橋達二訳 長谷川珈訳を読む。 「無意識の思考、深…

聴いて面白かったのは、読んでも楽しいのだ

東京 IN THE FLESH 作者:高木 完 イースト・プレス Amazon 『東京IN THE FLESH』高木完著を読む。 J-WAVE(81.3FM)の「TOKYO M.A.A.D SPIN」(火曜日の深夜、つーか水曜日の早朝3:00~5:00オンエア)のMCが著者。途中から聴きだした。近田春夫がゲストで近田…

「文学探偵」と助手による見事な推理

謎ときサリンジャー―「自殺」したのは誰なのか―(新潮選書) 作者:竹内康浩,朴舜起 新潮社 Amazon 『謎ときサリンジャー-「自殺」したのは誰なのか-』竹内康浩著 朴舜起著を読む。 サリンジャーの『バナナフィッシュにうってつけの日』は、『ナイン・スト…

「ねこ、こども、もうふ、ふね、ねっしー、」

ねこ・こども (幼児絵本シリーズ) 作者:佐々木 マキ 福音館書店 Amazon 『ねこ・こども』佐々木マキさくを読む。 約8カ月の仮住まいから建て替えた家へ引越し。6人家族になった。内訳は人が3人。猫が3人。 子どもと暮らしていたサビ猫姉妹は、家の中を自由に…

ネット巌窟王、またはネット偏屈王

イン・ヒズ・オウン・サイト ネット巌窟王の電脳日記ワールド 作者:小田嶋 隆 朝日新聞出版 Amazon 書籍の段ボールを開けたら『イン・ヒズ・オウン・サイト ネット巌窟王の電脳日記ワールド』小田嶋隆を発見せり。再読す。大掃除で畳を起こして敷いていた古…

ほんとうの「正しさ」にたどり着くためには

「みんな違ってみんないい」のか? ──相対主義と普遍主義の問題 (ちくまプリマー新書) 作者:山口裕之 筑摩書房 Amazon 『「みんな違ってみんないい」のか? 相対主義と普遍主義の問題』 山口裕之著を読む。 「みんな違ってみんないい」って金子みすゞの詩のフ…

飛ぶのが怖い―でも飛ばなければね、「サトーサトー」

離陸 (文春文庫) 作者:絲山秋子 文藝春秋 Amazon 『離陸』絲山秋子著を読む。 群馬の八木沢ダムで働く佐藤。国交省の官僚なのだが、この人里離れた環境は霞が関よりも自分にあっていると思えた。彼には恋人がいた。名前は乃緒。女優。遠距離恋愛になって疎遠…

すべて売り物―飲んだ、恋した、書いた

あの人たちが本を焼いた日 ジーン・リース短篇集 (ブックスならんですわる) 作者:ジーン・リース 亜紀書房 Amazon 『あの人たちが本を焼いた日 ジーン・リース短篇集』ジーン・リース著 西崎憲編 安藤しを ほか訳を読む。 作者は旧英国領ドミニカ国に生まれ…

漢字る 感じる―元祖ボーイズラブ小説

紺青のわかれ (河出文庫) 作者:塚本邦雄 河出書房新社 Amazon 『紺青のわかれ』塚本邦雄著を読む。一作目の小説だそうだ。 『十二神将変』で圧倒された作者の小説、復刻版文庫第二弾。 そんなに厚くない短篇集。なのに、読み終えるまで時間がかかった。ルビ…

よーく、もぐもぐしないと呑み込めないが、刺激的な本であることには間違いない

知の挑戦―科学的知性と文化的知性の統合 作者:エドワード・オズボーン ウィルソン 角川書店 Amazon 『知の挑戦~科学的知性と文化的知性の統合~』エドワード・O・ウィルソンが遅々として進まないけど、それはひっかかるところが多いということで。 引用2か…

令和版「男はつらいよ」と、あえてダサいキャッチコピーにしてみた

新しい声を聞くぼくたち 作者:河野真太郎 講談社 Amazon 『新しい声を聞くぼくたち』河野真太郎著を読む。 「本書のテーマは「ポストフェミニズム状況における男性性」です」 それは、こういうことだと。 「本章(第1章)では現代におけるもっとも重要な対立、…

もういいかい、まあだかい

百間、まだ死なざるや-内田百間伝 (単行本) 作者:山本 一生 中央公論新社 Amazon 『百間、まだ死なざるや-内田百間伝-』山本一生著を読む。 内田百間(通常は百閒なのだが、間にしているのは作者の意図か)と言うと、岡山の造り酒屋に生まれ、酒豪で健啖家、…

哲学というレンズで「言葉とコミュニケーション」にズームイン

言葉の展望台 作者:三木那由他 講談社 Amazon 『言葉の展望台』三木那由他著を読む。 まず、常套句を。ひとは、何らかのコミュニケーション無しでは生きていけないという。自分の気持ちや考えを他者に伝える、伝え合う。それがコミュニケーションで、そのた…

すぐ読める すごく面白い

おもいでマシン (新潮文庫) 作者:梶尾 真治 新潮社 Amazon 『おもいでマシン-1話3分の超短編集-』梶尾真治著を読む。 「1話3分」=400字詰め原稿用紙6枚。と、決めて書かれたショートショート。100文字SFならぬ2400文字SF。全40話。 あとがきで原点に立…

いま読んでもワクワクすッゾ!

スノウ・クラッシュ〔新版〕 上 (ハヤカワ文庫SF) 作者:ニール スティーヴンスン 早川書房 Amazon スノウ・クラッシュ〔新版〕 下 (ハヤカワ文庫SF) 作者:ニール スティーヴンスン 早川書房 Amazon 『スノウ・クラッシュ 新版』(上)(下)ニール・スティーヴン…

もし人類がテレポートできるようになったら

スター・シェイカー 作者:人間 六度 早川書房 Amazon 『スター・シェイカー』人間六度著を読む。 「21世紀晩年」。人間がWB(ワープボックス)によって自在にテレポート(瞬間移動)できるようになった。運転免許のようにテレポートもライセンス制になっている。…

バタイユ 1978 (3)

改訳決定版 マダム・エドワルダ ピエール・アンジェリック 生田耕作翻訳 金子國義挿絵 作者:ピエール・アンジェリック サバト館 Amazon 3. バタイユがよく用いた、そして彼の思想の中で重要な位置を占める「非‐知(ノンサヴォワール)」についてあれこれ考えて…

バタイユ 1978 (2)

内的体験 (平凡社ライブラリー) 作者:ジョルジュ バタイユ 平凡社 Amazon 2 バタイユはモラリストだったのだろうか。モンテーニュ、パスカル、デカルトたちのような。サルトルは、バタイユのうちに、パスカルの特徴をひとつならず見出すそうである。バタイユ…

バタイユ 1978 (1)

眼球譚[初稿] (河出文庫) 作者:ジョルジュ バタイユ 河出書房新社 Amazon 引越しの段ボールを開けていたら、卒論のファイルが出て来た。お気に入りだったパイロットの太字万年筆で書かれた原稿。誤字・脱字、意味不明な箇所に指導教授である矢内原伊作先生の…

私たちにいまでもハイデガーの『存在と時間』は有効か

極限の思想 ハイデガー 世界内存在を生きる (講談社選書メチエ) 作者:高井 ゆと里 講談社 Amazon 『ハイデガー-世界内存在を生きる-』高井ゆと里著を読む。 ハイデガーの『存在と時間』岩波文庫全3巻は、学生時代に読み通せた数少ない本。あ、一応読んだと…

やっと内定がもらえたら、そこは

異端の祝祭 佐々木事務所シリーズ (角川ホラー文庫) 作者:芦花公園 KADOKAWA Amazon 『異端の祝祭』芦花公園著を読む。 見えないものが見えてしまう島本笑美。同級生らとつきあうことが苦手で学校や地元に自分の居場所はなかった。勉強に打ち込んで東京の大…

「1945~75年の変格ミステリベスト10」(仮) 

竹本健治・選 変格ミステリ傑作選【戦後篇I】 (行舟文庫 GSた 1-2) 作者:香山 滋,大坪 砂男,橘 外男,山田 風太郎,土屋 隆夫,日影 丈吉,陳 舜臣,戸川 昌子,小松 左京,中井 英夫 行舟文化 Amazon 『変格ミステリ傑作選 戦後篇1』竹本健治選を読む。「1945~75…

点から線へ。日本のミステリーの系譜を知る。ぞくぞく、読みたい本も

怪異猟奇ミステリー全史 (新潮選書) 作者:風間 賢二 新潮社 Amazon 『怪異猟奇ミステリー全史』風間賢二著を読む。 日本のミステリー、主に昔の作品を、虫食いで読んでいる。情報源はネットレビューなど。そこで評判のよいものを買ったり、借りたり。圧倒的…

袋小路の男、『袋小路の男』を読む

袋小路の男 (講談社文庫) 作者:絲山秋子 講談社 Amazon 2005年に書いたレビュー。 まだ読んでなかった絲山秋子の『袋小路の男』を昨夜からと地下鉄の往復でさくさくと読了。曙橋つーか、市谷河田町は、フジTVが以前あったところで、生CMの仕事で一時期通った…

諧謔のスノビズム―死を嗤え

ブラック・ユーモア選集〈2〉囁きの霊園 (1976年) 作者:イーヴリン ウォー Amazon 『囁きの霊園』イーヴリン・ウォー著 吉田誠一訳を読む。 イーヴリン・ウォーはグレアム・グリーンと並ぶイギリスを代表するカトリック作家である。彼は現代文明をそして醜悪…

「400万年」に及ぶ人間、もしくは科学者の試行錯誤ぶりをまとめた労作

この世界を知るための 人類と科学の400万年史 (河出文庫) 作者:ムロディナウ,レナード 河出書房新社 Amazon 『この世界を知るための人類と科学の400万年史』レナード・ムロディナウ著 水谷淳訳を読む。 人類の誕生から科学がどう生まれて、どのように現代ま…

一文字の大宇宙―洒脱だったり、くすっとしたり、感心したり

詩人キム・ソヨン 一文字の辞典 作者:キム・ソヨン CUON Amazon 参議院選挙の結果は、ほぼマスコミの予想通り。つまらないので、つまらなくない本を読む。 『詩人キム・ソヨン一文字の辞典』キムソヨン著 姜信子監訳 一文字辞典翻訳委員会訳を読む。 漢字は…

黒衣をまとった詩人

左川ちか全集 作者:左川ちか 書肆侃侃房 Amazon 『左川ちか全集』左川ちか著 島田龍編を読む。 伊藤整は読んでいた。春山行夫も知っている。北園克衛は大好きな詩人だし。でも、なぜか、左川ちかは知らなかった。彼らとこんなに身近だった彼女を。 評判を聞…

エンパワーメントとしての対話―「我、思う」から「我々、話す」へ

水中の哲学者たち 作者:永井玲衣 晶文社 Amazon 『水中の哲学者たち』永井玲衣著を読む。 アルキメデスは入浴しているとき、あふれるお湯を見て、はたと閃いた。これが、「アルキメデスの原理」。この本も南の透き通った海をシュノーケリングしているときに…

柄谷が、こんなにわかっていいのかしら

トランスクリティーク――カントとマルクス (岩波現代文庫) 作者:柄谷 行人 岩波書店 Amazon 『トランスクリティーク カントとマルクス』柄谷行人著を読んだ。 標題の『トランスクリティーク』とは何か。作者は本文中にこう記述している。 「科学史におけるコ…