「400万年」に及ぶ人間、もしくは科学者の試行錯誤ぶりをまとめた労作

 

 

『この世界を知るための人類と科学の400万年史』レナード・ムロディナウ著 水谷淳訳を読む。

 

人類の誕生から科学がどう生まれて、どのように現代までバトンされていったか。
物理学者で作家でもある作者が「400万年」に及ぶ人間、もしくは科学者の試行錯誤ぶりをまとめた労作。科学もコンピュータなどと一緒で完成型というものはない。常に開発途上にあることを知らされる。

 

3部からなるこの本。

 

第1部 直立した思索者たち


ここでは人類の先祖にふれている。「哺乳類の始祖プロトゥングラトゥム ドンナエ」や「ヒトの始祖ホモ・ハビリス」。道具を使用していたホモ・ハビリスは「直立する人」へ。「さらに大きな脳を持つホモ・サピエンス」へ。狩猟から農業、工業など文明が興り、都市が誕生する。「文字言語がはじめて使われたのは」「メソポタミア南部のシュメールにおいて」だった。


粘土板に刻まれた文字や数字から数学や科学法則などが記録され、より多くの人々に伝わることとなる。話をはしょって古代ギリシャ時代。アリストテレスが科学を一新したと。しかし、課題もあった。

「(アリストテレは)法則の定量的な細部よりも、なぜ物体がその法則に従うかという疑問のほうに関心があった。―略―ここに、アリストテレスの哲学と今日の科学の進め方との最大の違いがある。アリストテレスは自然の目的と解釈するものを見て取ったが、今日の科学ではそのようなことはしないのだ」

 

第2部 科学

アリストテレスの考え方はニュートンの時代に至るまで自然界に関する思索を支配し続けたが、その長年の間に、自然を観察してその理論に疑問を投げかける人も大勢いた」


その代表的な一人がガリレオ・ガリレイ。当時の科学は実験を軽視していたと考えていた彼は創意工夫して実験装置まで手作りした。


「取り組み方には重要な面が二つある。第一に、予想外の結果が得られたら、ガリレオはそれを否定するのではなく、自分の考え方の方に疑問を持った。第二に、ガリレオの実験は定量的であり、それは当時としては革新的だった」


第3部 人間の五感を超えて


そしてニュートンの登場となる。ニュートンケンブリッジアリストテレスの著作を読む。「ガリレオの『新科学対話』は出版されてから20年余り」「ケンブリッジのカリキュラムにはほとんど影響を与えていなかった」。ニュートンガリレオと同様に「アリストテレスの主張に納得できなかった」。
ニュートンケンブリッジ大学で教鞭に立っていたが、講義内容が書きかけの『プリンキピア』だったという。で、学生たちはチンプンカンプンだったというエピソードにひかれた。
当時は最先端だったニュートンの理論では、量子力学など最新科学は解明できない。


かように科学は「巨人の肩の上に乗って」進化、深化、新化してきた。そのことを感じ入った。

 

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