ネット巌窟王、またはネット偏屈王

 

 

書籍の段ボールを開けたら『イン・ヒズ・オウン・サイト  ネット巌窟王の電脳日記ワールド』小田嶋隆を発見せり。再読す。大掃除で畳を起こして敷いていた古新聞を読むようなものか。


作者の書いたものをいっとう最初に読んだのは、いまは亡きタウン情報誌シティロード』だと記憶している。


自身のWebやブログで書き綴っていた膨大なテキストの山から編集者が単行本用によりぬきしたもの。

 

ウチダタツル先生のエクリチュール上の師といわれる作者の文章は、毒、自虐的、斜に構えながらも、ときどき弱気や胸の内を見せる。まるで目をうるうるさせてエサをおねだりするネコのように、だ。かっぱえぴせん状態となってしまうのは、こりゃ立派な芸だ。

 

またアウトサイダー(自称「会社員失格」)というポジションから、世の中の跳梁跋扈、タテマエ、矛盾、ウソ八百などの化けの皮をものの見事にひん剥いてしまう。

 

人はなぜWebやブログに金にもならないテキストをせっせと更新するのか。「それは(そこにのせるテキストには)責任がないから」とのたまわれている。そーか。分類すると、つーか、ぼく的に興味をもったもので分類してみると、このようになる。

 

○サッカー
何せ浦和レッズの熱狂的なファンゆえ、サッカー好きならば、笑えるものが、トルシエなどなど懐かしいものを含めかなりある。

 

アルコール依存症
まったく知らなかったが、作者はかつてそうだったらしい。それを克服していまは一滴も飲まないそうだが、その立場から、中島らも、この本には収録されていないが、高田渡が亡くなったときも手厳しいことをブログで述べていた。

 

○反米・反読売(もしくは嫌米・嫌読売)
サッカーファンならばナベツ○は、好きくないでしょう。同じ範疇の中にアメリカやアメリカ大統領がいる。これもおいおい!そこまでいうのかと思ったり、技あり、一本!というものもあり。

 

○パソコンまわり
肩書きにテクニカルライターとついているので専門的なネタかと思ったら、そうでもなくて、笑える。

 

○衰え
作者はぼくと同世代ゆえ、身体の各所にガタがきて、その症状や病院・医者ネタが割りと多くて、医者嫌い・病院嫌いなくせして痛みにからっきし弱いという揺れ動く中年おのこの心に大いに共感させられた。


あとは沢木耕太郎について書いている箇所。常々ぼくが感じていたことを、実に的確に辛口に書いている。


タイトルの「オウン」は「オウンゴール」の「オウン」でもある。旧名、自殺点

も少し長生きしてもらって小言幸兵衛になった著作が読みたかった。

 

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