『風に吹きはらわれてしまわないように』リチャード・ブローティガン著 松本淳訳を読む。『ハンバーガー殺人事件』(晶文社 1985年刊)の改題改訳だとか。当時、読んだのか。書名は覚えているが、たぶん、読んでいない。
『アメリカの鱒釣り』に魅了され、その後、藤本和子訳のものは読んだ。ブローティガンブームが去って、別な作家のを読んでいたのかも。
最後の作品は「オレゴン州での少年時代」の思い出を書いたもの。訳者解説によると、アメリカでも売れ行きは芳しくなかったそうだ。
貧しい家に生まれた少年は、空き瓶集めや釣りに使うミミズ集めで小銭を稼ぐ。貧しき人々。でも、それなりにビンボーライフを楽しんでいるような。そう見えるのは、諦め、開き直りなのだろうか。
葬儀斎場と「棟続きの貸家」に住んでいた。次が「みすぼらしい黄色いアパート」。「おんぼろの一軒家」。次が「オートコート」。モーテル。少年は家の手伝いが嫌いで年寄りと話をするのが好きだった。
少年はハンバーガーに興味を覚え、パテからバンズまで作り方などを記者のように店主に質問する。ハンバーガーを買うつもりだったが、その金で22口径の拳銃の弾丸を買う。なぜか彼はマイ拳銃を持っていた。
非モテの少年はモテ系の少年・デイヴィッドとなぜか仲良し。それぞれの銃を持って雉撃ちに行く。そこで悲しい出来事が…。
ボブ・ディランは『風に吹かれて』で「友よ、答えは風の中にある」と歌った。
ブローティガンは「風は吹きはらわない つちぼこり。アメリカに舞う…土ぼこり」と。このフレーズが短い話の終わりに繰り返し出て来る。
どうして「風は吹きはらわない」のか。一瞬、土ぼこりは宙に舞うが、やがて落下するからなのかな。
リアリズムと自虐的ユーモアが入り混じったペシミスティックな私小説。といってもよいだろう。あ、西村賢太あたりにもつながる。
