2025-08-01から1ヶ月間の記事一覧

親友から偽姉妹へ―忍び寄る聖職者の黒い翳

復讐には天使の優しさを (白水Uブックス/永遠の本棚) 作者:イサク・ディネセン 白水社 Amazon 『復讐には天使の優しさを』イサク・ディネセン著 横山貞子訳を読む。 純文学作家がエンタメ作品を発表するとき、別名義だったり、覆面作家とかにする。最近は流…

愛する巨人、愛する大地

海風クラブ (角川書店単行本) 作者:呉 明益,三浦 裕子 KADOKAWA Amazon 『海風クラブ』呉明益著 三浦裕子訳を読む。 台湾は漢民族とさまざまな先住民族からなる島。その先住民族の一つタロコ族の巨人伝説にフォーカスした物語。柳田国男の「山人」みたいなも…

「映画・文学・アングラ」そしてジャズ喫茶についての考察

戦後日本のジャズ文化――映画・文学・アングラ (岩波現代文庫) 作者:マイク・モラスキー 岩波書店 Amazon 『戦後日本のジャズ文化』マイク・モラスキー著を読む。 「映画・文学・アングラ」そしてジャズ喫茶についての考察。肯けたり、肯けなかったり。 初ジ…

賢姉愚弟―にくみきれないろくでなし

おとうと(新潮文庫) 作者:幸田文 新潮社 Amazon 『おとうと』幸田文著を読む。 若くして結核で亡くなった実弟。生前はやんちゃでな不良だった。姉は病死した母に替わり愛情を注いでいた。作家である父と後妻との仲は決して睦まじいとは言えない。流行作家…

ここにも、ここにも、「青ひげ」が憑依している

青ひげ夫人と秘密の部屋~「見たな」の文学史~ 作者:千野 帽子 光文社 Amazon 『青ひげ夫人と秘密の部屋 -「見たな」の文学史-』千野帽子著を読む。 「青ひげ」というと、真っ先にジル・ド・レを思いつく。卒論でジョルジュ・バタイユをテーマにしたのだ…

「中心を持たない分散型のネットワークは、物というよりプロセスである」

複雑系を超えて: システムを永久進化させる9つの法則 作者:ケヴィン ケリー アスキー Amazon 図書館から借りた『「複雑系」を超えて システムを永久進化させる9つの法則』をダラダラ読んでいる。作者は『ワイアード』誌編集委員のケヴィン・ケリー。厚いし、…

『ぼくの伯父さんの休暇』でヴァカンス気分

ぼくの伯父さんの休暇 [DVD] ジャック・タチ Amazon 図書館で本の返却と貸出。カルディでコーヒー豆や黒酢、春雨スープなどを買い込む。 原稿を送ってから『ぼくの伯父さんの休暇』のDVDをひっぱりだして見る。久々。 ジャック・タチ監督演ずるムッシュ・ユ…

聞けば見えてくる。読めば見えてくる

伊藤明彦の仕事1 未来からの遺言-ある被爆者体験の伝記/シナリオ 被爆太郎伝説 作者:伊藤明彦 編集室 水平線 Amazon 『伊藤明彦の仕事1 未来からの遺言-ある被爆者体験の伝記/シナリオ 被爆太郎伝説』伊藤明彦著を読む。 著者は長崎のラジオ局で被爆者…

二人のロボット建造師の宇宙珍道中記

電脳の歌 (スタニスワフ・レム・コレクション) 作者:スタニスワフ・レム 国書刊行会 Amazon 『電脳の歌』スタニスワフ・レム著 芝田文乃訳を読む。 古くは弥次さん・喜多さんから本家珍道中もののビング・クロスビー、ボブ・ホープ。R2-D2・C-3POなどなど。…

書店は書棚と平台による「購書空間」だと。でも、街の書店は消えてゆくばかり

書棚と平台: 出版流通というメディア 作者:柴野 京子 弘文堂 Amazon 『書棚と平台』柴野京子著を読了済だったが、まとめる時間がなくて、短く感想をば。 流通は川上―川中−川下と流れる。って、この言い方ももはや古いのかな。書籍に当てはめれば川上(出版社…

自由と希望へのエクソダス

ジェイムズ 作者:パーシヴァル・エヴェレット 河出書房新社 Amazon 『ジェイムズ』パーシヴァル・エヴェレット著 木原善彦訳を読む。 子どもの頃、マーク・トウェインの『トム・ソーヤーの冒険』にわくわくした人は多いだろう。『ハックルベリー・フィンの冒…

南方諸島と広島とパレスチナ・ガザ―日常の中の過去と現在の戦争

作文 作者:小山田 浩子 U-NEXT Amazon 『作文』小山田浩子著を読む。 夏休み、家族の戦争体験を聞き書きする宿題が出された。小学6年生の千本慶輔は戦地で南方に赴いた祖父から話をきこうとしたが、結局話してくれず、『おじいちゃんの飯ごう』という作文を…

オウム事件は日本人のニヒリズムの鬼子である

善悪の彼岸へ 作者:宮内 勝典 集英社 Amazon 『善悪の彼岸へ』宮内勝典著を読む。ニーチェではない。 読了後の率直な感想は、結局、ぼくは事の本質を何も知り得ていなかったということだ。作者は、世界を放浪し、カウンターカルチャー、ニューサイエンスなど…

巨人ならぬフランケンシュタインの肩に乗って

ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる (岩波新書) 作者:小川 公代 岩波書店 Amazon 『ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる』小川公代著を読む。 メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』は、人造人間ものの始祖としてホラーやSFなど…

意外かもしれないが、第二次大戦前の日本でも「ウィアード・テールズ」の作品は翻訳され、読まれていた

怪樹の腕 〈ウィアード・テールズ〉戦前邦訳傑作選 東京創元社 Amazon 『怪樹の腕 <ウィアード・テールズ>戦前邦訳傑作選』会津信吾編 藤元直樹編を読む。 「ウィアード・テールズ」とは。 「H・P・ラブクラフト、クラーク・アシュトン・スミスら孤高の天…