『戦時の愛』マシュー・シャープ著 柴田元幸訳を読む。
『戦時の愛』、そうさな、爆弾が降り注ぐ中、防空壕内の秘めた恋愛とかを想像されるだろう。『戦争』という作品があるが、そうではない。それだけではない。
どう書けば、この魅力を伝えられるんだろう。困った。
通常、人は類推するとき、似たようなものを記憶から引き出して判断する。
ちょっとやってみることにする。
リチャード・ブローティガンのようでリチャード・ブローティガンでない。
リディア・デイヴィスのようでリディア・デイヴィスでない。
ブライアン・エヴンソンのようでブライアン・エヴンソンでない。
A・E・コッパードのようでA・E・コッパードでない。
北野勇作の『100文字SF』のようで『100文字SF』でない。
コントや一人芝居のようでコントや一人芝居でない。
奇想、奇妙、ホラー、オカルト、SF。カテゴライズできない。
オチもない。ナンセンスや不条理なものもある。ポップとも言える。
だが、それだけではない。
さっと読んでから咀嚼してじわじわ良さがわかるのもあるし、
そのままズカズカとこっちの心に入ってくるのもある。
ある作品には、じんとさせられる。違う作品には、単によいと思わせられる。
「文学の良い匂いがする」。この言い回しが好きで頻発しないようにしているが、
この本には使いたい。