『神の子どもたちはみな踊る』村上春樹著を読む。
NHK土曜ドラマ「地震のあとで」の原作。よくできたドラマ。「映画『ドライブ・マイ・カー』の大江崇允が脚本」だからか、通底するものがある。それから大友良英の音楽がじわじわくる。
で、昔、書いたレビューをひっぱり出してきた。
一ファンとして本作を読むまでかなりの躊躇があった。話は前に戻る。『ねじまき鳥クロニクル』。ハードカバー3冊でありながら、あっという間に読めた。でも、見事なまでに何も残らなかった。(追記ー再読してみたい。)
地下鉄サリン事件被害者へのインタビュー集。作者初のノンフィクションというのが売りの『アンダーグラウンド』。感想は、ノンフィクションというよりも、テープ起こし(インタビューしたテープをそのまま書き起こしたもの)の生原稿みたい。果たしてこれってノンフィクションなの。田中康夫が「村上春樹はサリン事件ではなく神戸大震災を書くべきだ」という批判を記憶している。
『スプートニクの恋人』。なんだか村上春樹自身のエピゴーネン(亜流)に思えてならなかった。
さて、読了後、印象がさめないうちに、パソコンのキーボードをたたいている。本作のテーマは、ポスト「神戸大震災」。といっても、そこはそれ、作者のことだから、直接的な話ではない。そのテーマの伝播(でんぱ)したもの、日本人の精神への波及効果を6つの短篇で連ねている。
なるほど、作者は「神戸大震災」への落とし前をこうつけたのか。が、率直な感想。一篇、一篇の世界観は、いままでに感じたことがないほど、いきいきしている。短篇なのに、ひろがりがある。豊かな奥行きとでも言えばいいのだろうか。血の通っている生身の人間の息遣いが伝わってくる。
僕が好きなのは、ちょっとスティーブン・キングっぽい『かえるくん、東京を救う』と『蜂蜜パイ』。表題にもなった『神の子どもたちはみな踊る』も、オウム真理教の子どもたちと重ねてみると、深いものがある。巧さと凄さ。純度の高い作品である。
「これまでとは違う小説を書こう、と淳平は思う」(『蜂蜜パイ』)。作者は新境地を切り開いたのか。答えは、次作にある。
