『猫のゆりかご』カート・ヴォネガット・ジュニア著 伊藤典夫訳を読む。きっかけは、『翻訳を産む文学、文学を産む翻訳-藤本和子、村上春樹、SF小説家と複数の訳者たち-』邵丹著を読んだから。
カート・ヴォネガットの本を読んだのは大学生以来。今年は、読み直し本にカート・ヴォネガットの本もリストアップしておこう。まずは、『猫のゆりかご』。
短い章立て、つーか断片のようなものが全部で127。その集合体からできている。
各章のタイトルがキャッチ―。
はじめはテンポよく読めるのだが、だんだん、つながりがわからなくなっている。
作者の思うつぼってとこかな。
主人公の名前はジョーナ。知らない?ヨブ記のヨブの英語読みだそうだ。知ってる?
実存哲学の元祖の一人、キルケゴールの『反復』にも出て来るんだけど。彼は『世界が終末をむかえた日』という本を書くために、世界中を旅している。その本を書き上げるためにキリスト教徒から怪しげなボコノン教の信者となった。
ボコノン教とは何か。その教義や経典「ボコノンの書」などを、ちょっとずつ、つまびらかにしていく。そしてもう一つ。世界を破滅へ導くといわれる最終兵器(?)「アイスナイン」。こちらも、チラ見させながら。
宗教のうさん臭さと戦争がやめられない人間の愚かさをナンセンスかつ毒のあるユーモアで包んだポップな作品。なんだけど、いま、読んでもまったく風化していない。
コロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻、カルト宗教に溺れる人々、ネットの発達により野火のように拡大する陰謀論などのデマゴギーなどなど。ボコノン教は千変万化して世界各地に現われているのかもしれない。
大学の英語の授業でテキストがヴォネガットの短篇集『モンキー・ハウスへようこそ』だった。講師は翻訳家もしている男性で飄々としたいい感じで授業を進められた。
ヴォネガットの英文は一見やさしそうに見えたが、いざ、日本語に訳そうとすると
英和辞典を引いてもまったくうまく訳せなかった。
村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』は、この本のオマージュだろうか。あ、思いつきっす。