じれったい。じれったい。じれったい

落下する夕方 (角川文庫)

落下する夕方江國香織著を読む。


はじめにタイトルにひかれた。カンディンスキーやミロあたりがつけそうな良いタイトルである。

 

落下する夕方』、それは何を象徴しているんだろう。落日の恋かもしれない。恋がキラキラしていて、甘いのって、ほんの一瞬だよね。後は、苦かったり、退屈だったりして。でも、そこから本物の恋になっていくと思う(なんてね)。

 

主人公・梨果は、子ども向けのアートスクールの先生。ラガーマンだった体育会系の恋人・健吾と一緒に暮らしている。お互いになかなか結婚に踏み切れないうちに、ある日、彼が彼女に別れを告げる。彼に新しい恋人華子ができたからだ。

 

こともあろうに、まもなくその新しい恋人、華子は、梨果のアパートで一緒に暮らし始める。もう健吾とは別れたのか。でも、なぜ迷い猫のように彼女の部屋へ。このコは、自分の感情のおもむくままに、軽いフットワークで生きている。まるでネコのように。誰にでもこういうタイプの知り合いが1人ぐらいはいると思うが。すぐ恋におちては、すぐさめてしまい、また新しい恋を楽しむ。これまでの手当たり次第の恋の遍歴もいろいろと見えてくる。

 

対照的に、梨果は自分の思いをなかなか打ち明けることができない。だから、どこか、もとカレの彼女がうらやましい。いわばトラブルメーカーの彼女にさんざん振り回されても、どこか許してしまう。


梨果と健吾と華子の顛末(てんまつ)は…。意外な話のオチが効いている。

 

ふわふわとした水彩画を思わせる淡い世界。静かなトーンだけど、読み終えた後に、強い共感を覚えさせた。お洒落な高級洋菓子をイメージさせる装丁もなかなかのものである。

 

人気blogランキング