10月は黄昏の国

母の記憶に (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

母の記憶に (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

 

ブラッドベリの名著から引用。
黄昏の国、日本。
選挙だけど、本家八ツ橋と元祖八ツ橋、
山本屋本店と山本屋総本家、
どちらを選べと言われてもなあ。
改めてリベラルの実態の希薄さと
打たれ弱さを感じる。
黄昏に飛翔するのは、
ミネルバのふくろうか、それとも。

『母の記憶に』ケン・リュウ著を読む。
趣向の異なる「16篇」、堪能しまくりました。
自分のルーツである中国と第二の祖国アメリカ。
そこにまつわる差異、差別などを
SF風味に仕立ててアイデンティティを問うている。
で、以下、短い感想をば。

『烏蘇里羆(ウスリーひぐま)』
ケン・リュウ版『白鯨』。
帝国陸軍からハンティングを依頼された男と
巨大羆との戦い。
馬がロボットなんだけど、カッコいい。
どこもかしこもスチームパンクの世界。
憶測だけど、作者も日本の特撮モノやアニメーションに
影響されているのだろう。
伊藤計劃が生きていたら、さぞかし喜ぶ作品。

『母の記憶に』
難病の母、地球にいては生存が望めないと
娘のために宇宙へ。
母は老いることなく
娘の方が老いていく。
ショートショートなんだけど
その深淵さはブラックホールなみ。

『レギュラー』
世界の中心で愛を叫んだけもの』の著者ハーラン・エリスン
真っ青の近未来ハードボイルドつーかミステリー。
冒頭のキモい殺人シーンなんて映像が浮かんだものね。
こういうのもうまいとは。
「私立探偵ルース・ロウ」。
このキャラでシリーズものを期待する。

『存在(プレゼンス)』
介護の未来形。
スマートフォンで安否確認できるとかの
進化したもの。
それでも間もなく最愛の母を失うという息子の心境が
描かれている。
ロラン・バルトの『喪の日記』じゃんと思った、マジ。

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