クラシックな本格探偵小説である

 

とむらい機関車

とむらい機関車

 

 

とむらい機関車』大阪圭吉著を読む。


和製ホームズといってもいい、名探偵青山喬介が活躍するクラシックな本格探偵小説集。
探偵小説以外のものでも読み手をうならせる。戦前に発表された作品だけど、
まったく古びていない。そう思えるのは現代を反映した悲惨なミステリーに
ならされているからなのだろう。ま、確かに警察より先に動いてリサーチして
真犯人や事件を解明するのは、リアリズムを重んじる社会派推理小説好きな人には受けないかもしれないが。

 

とむらい機関車」
「元鉄道員」が語る奇妙な事件。1週間おきに「轢死事件」に出くわす機関車が存在した。彼は「とむらい機関車」の運転士だった。轢いたのは人間ではなかった。助役たちはその謎を明かそうと探り出す。また事故が起こる。今度は人だった。なぜ。哀しい結末が。蒸気機関車のメカのシステムなどがやけに詳しい。作者は鉄チャンだったのだろうか。

 

「デパートの絞刑吏」
デパートで社員が飛び降り自殺。「私」と青山喬介が駆けつける。どうやら殺されたようだ。死体を子細にチェックする喬介。彼がホームズなら「私」は助手のワトソン。おなじみの名推理。探偵青山喬介は本家ホームズほど慇懃ではない。意外な犯人を突き止める。

 

「白鮫号の殺人事件」
白鮫号のオーナーキャプテン深谷氏が殺された。そこに「私」と青山喬介が参上。
冴える喬介の推理。登場人物を変更して「死の快走船」になった。読み比べると、
作者の苦心が見える。本作もなかなか粋な味がある。

 

「雪解」
北海道で金鉱脈を探して3年。木戸黄太郎は金鉱そばの温泉地に投宿する。宿で砂金師父娘と知り合う。豊富な「紗金脈」を目の当たりにして黄太郎は自分のものにしようと欲が出て砂金師を殺める。父親は失踪したと何の疑いも持たない娘。春になって「紗金脈」を大がかりに採掘。鉱脈は肝心の金ではなく、さらに失踪した砂金師の金の指輪が。娘は事の顛末をようやく知る。

 

「抗鬼」
「室生岬の突端」にある坑道。海底炭田で働く新婚夫婦お品と峯吉。突然爆発、火災事故が起こる。お品は間一髪助かるが、峯吉の姿がない。「採掘抗」は「鉄の扉」で蓋される。その作業を指示していた丸山技師が死体で発見される。峯吉の母親が犯人にされるが、また次の殺人事件が起こる。ひねりにひねったサスペンスフルなオチ。

 

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