がっつり たっぷり カメレオン・アーミー

 

 『カメレオンの影』ミネット・ウォルターズ著 成川裕子訳を読む。
このところ短篇集ばっか読んでいるので、長篇をと、この本をチョイス。

 

主人公アクランドは「英国陸軍中尉」、26歳。
イラク派兵で爆弾により頭と顔に大怪我を負う。
昏睡から目覚める。片方の目を失い顔面も半分ほど肉をえぐられていた。
彼は顔面復元の整形手術を拒否する。
TBI(外傷性脳損傷)からなのか暴力的になり、女性に嫌悪を抱く。
精神科医が治療にあたるが快方には向かわない。

 

女性嫌いの一因は元婚約者のユマ・サーマン似のジェンにある。
以前は売れない女優でいまは夜の女。

 

アクランドは軍に戻ろうとするが、叶わず。失意の除隊となる。
行き場のない彼はトラブルメイカ―となる。
アイパッチをつけたいわば異形の男。
ささいな諍いでも暴力への歯止めがきかない。
そして彼がかかわった男たちが次々と殺される。

当然、警察はアクランドを殺人犯としてマークする。

 

アクランドにからむ登場人物が揃ってくせ者揃い。
女医でありながらパブのオーナーであるジャクソン。大柄でマッチョなレズビアン
ホームレスのチョーキー。アルコール依存症。元軍人らしい。
「家出少年」のベン。ジャニーズ系のイケメンらしくゲイにも狙われる。
などなど。

 

作者は屈折した人間心理を描くのが巧み。
生きる希望を失くした人間の心の奥をとらえる。

表の顔ではうかがえない裏の顔を執拗に。
隠しておきたいいわば人間の影の部分をつまびらかにする。
作者の真骨頂だろう。
読んでいてゾクゾクする。

 

長篇でありながら、事件を新聞記事、報告書、手紙などを駆使して
リアリティと飽きさせない工夫がしてある。

 

犯人は意外な人物。実際はそうでもない。

 

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