デビュー四十周年

 

先をゆくもの達

先をゆくもの達

 

 『先をゆくもの達』神林長平著を読む。

 
「作家デビュー四十周年記念作品」。
作者らしいハードかつ斬新な着想のSF小説
 
近未来。火星にコロニーを建設した人類。
それまで火星で産むのはすべて女性だった。
なぜなら男はジェンダー的にダメだから。
ま、認めるけどね。
その禁忌を犯して男子を生む決意をする火星の女性リーダー。
 
うろ覚えだが福岡伸一ハカセが確か
「人ははじめに女性として生まれる。それから男性になるので
男性には不具合が生じることが多い」と述べられていた。

地球つーか日本は温暖化と人口減少で
本州の水田は稲作から水力で電気を発電する電田になっている。
人は集合知「トーチ」、神のような存在、をより所にしている。
日常生活は機械知性「タム」に支えられながら生きている。
なんだかドラえもんのび太の関係に似ている。
で、一部の機械知性が野良化してうろついている。
3.11で福島で放たれた牛や豚などの家畜が野良化したことを思い出す。
 
このあたりの設定やメカっぽさがいつもながら冴えている。
「トーチ」や「タム」をアニメやフィギュアなどで視覚化、造形で見てみたい。

人、機械、人工知能
肉体、精神、性差。
今日的なテーマを踏まえて未来を読者に見せてくれる。
後半は火星というか人類の第二の創成期といった感じ。
神話っぽいまたは神々しさは、SFオタクでなくてもたまらないだろう。
 
作者の熱心なファンではないが、そこにブレない、変わらない作家の立ち位置がある。
以前ブログで作者を「SF界の山下達郎」と称した。
たぶん同年生まれ。ある意味頑固な職人(アルチザン)気質みたいなものが共通している。
達郎の奥方の竹内まりやもデビュー四十周年だし。はは、こじつけ。

書きますた。
「お陀仏したらな 」