巡礼

巡礼

巡礼

『巡礼』橋本治著を読む。
冒頭、いわゆるゴミ屋敷が出て来る。
なぜゴミ屋敷になったのか。
そのゴミを集める男の履歴、家の履歴がつまびらかにされていくのだが、凄い。
作者の生家は確か牛乳屋で、町の小商いを生まれながらにして観察してきた。
世の中の流れを先読みして成功する店もあれば、
例えば酒屋からコンビニとか。
始終商売替えをしては挙句の果てに身代を潰す店もある。
主人公は荒物屋の跡継ぎとして生を享け、
商業学校卒業後、丁稚奉公に行く。
畑ばかりの町にバス路線ができ、団地ができる。
道路計画に店舗がかかり、補償金などで店を新築、瓦店に商売替えをする。
結婚して長男が生まれるが、不幸な運命だった。
そのヒビは、次第に大きくなっていく。
少年、青年、成年、中高年。年齢を重ねるとともに、
溜まっていく性根の腐ったオリのようなものが、執拗に表現されている。
家族、親族、隣近所という地縁血縁、共同体の崩壊を
ものの見事に描き出している。
なんてリアル。デラシネ、根無し草、違う、根絶やしだ。


原発はアブないからいらない」
「じゃあ電力は、どうする。対案を出せ、エコロジスト諸君」
っていう図式か、大雑把にまとめれば。
エアコンのない部屋、うす暗い夜、
コンビニは閉店、自販機はクローズド、TVは砂嵐の夜中。
便利さに骨の髄までひたっているのに、不便に耐えられるだろうか。
その覚悟はあるだろうか。
夏場、冷房のない頃の地下鉄のラッシュって辛かったなあ。


人気blogランキングへ