報道は<犯罪被害者>への対応がどこまで変わっただろうか

 

 

『<犯罪被害者>が報道を変える』高橋シズエ・河原理子編を読む。

 

犯罪被害者は、報道被害者となって、新たな肉体的・精神的損傷を蒙る。いわば、二次罹災だ。地下鉄サリンをはじめ、代表的な数事件の犯罪被害者が、その被害体験を述べているが、生々しい。

 

犯罪者には人権があって犯罪被害者にはないのか。物見遊山的に亡くなった被害者の写真や血のついた犯行現場なんか見たくない。特に誤報だよね。紙面でちっちゃくお詫びの文面をのせたって、もう失墜した信用は、瀕死寸前。

 

もし、ぼくやあなたがそうなったら、いたたまれないだろう。まったく可能性がないとは言えないわけだし。

 

宮澤さん一家の事件で奥さんのお姉さんの発言の一部。
「報道の方たちにお願いしたいのは、単にマナーの問題ではないのです。―略―たとえどんなに丁寧な言葉で、一流ホテルに場所を用意して取材を求められたとしても、何のために何を伝えたいのか、人間への深い関心、マスメディアの持つパブリックな力や意味への自覚がなければ、私は断ります」


妻子を殺された木村さんの発言の一部。
「事実と違うことを報道されても、新聞に書かれたことが「事実」になってしまう。被害者はそれを一番心配します」


ただし救いもあって、取材陣、みながみなダメではなく、良心的な人もいて、救われたりしたそうだ。

 

メディアスクラム」なる言葉を覚えた。日本語にすると「集団的過熱取材」というらしい。事件現場へわれ先にスクープを取ろうと、マスコミ各社がはせ参じ、押しかける現象。


巻末の全米犯罪被害者センター(NCVC)の「被害者がしていいこと」が参考になる。
ノーカット引用。

「被害者がしていいこと

1 取材依頼者に対して「イヤです」と断ること
2 外部との間に入ってくれる人を選ぶこと
3 取材の時間や場所を選ぶこと
4 取材の際、特定のジャーナリストを選ぶこと
5 嫌なジャーナリストの取材を断ること
6 過去に取材を受けていても、場合によっては断ること
7 取材を受ける代わりに、別の人を通じて書面を発表すること
8 取材から子どもを守ること
9 嫌な気持ちになる質問や関係ない質問に答えないこと
10 大勢のジャーナリストから一度に取材を受ける記者会見のような雰囲気を避け、個々に対応すること
11 間違った報道や写真があったときに訂正を求めること
12 イヤな写真や映像が出版されたり放送されたりすることがないように頼むこと
13 テレビのインタビューはぼかした映像で、新聞のインタビューは写真撮影なしで話すこと
14 被害について、完全に被害者の立場から話をすること
15 事件の裁判中にはジャーナリストからの質問に答えなくてもよいこと
16 取材をするジャーナリストに公式な苦情を申し立てること
17 周りの人たちにそっとしておいてもらい、一人の人間として悲しむこと
18 被害者が住む地域で、活字・テレビ・ラジオ・インターネットなどの
メディアに対して、メディアと被害者についての研修を提案すること

          全米犯罪被害者センター(NCVC)」


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