BLACK MARKET WOMAN

闇市 (新潮文庫)

闇市 (新潮文庫)

 

なんとか原稿の続きが書けるようになる。
試しにBLACKNIKKAを伊賀の天然水強炭酸水で
割ったハイボールを飲む。
うまいと思ったから、結構、恢復したんだろう。
おいおい。
鯨ベーコンは20代に安酒場で一生分食べたし、
鯨の竜田揚げも学校給食で食べた。
鯨はもういいや。

闇市マイク・モラスキー編を読む。
英語でBLACK MARKET。
編者は日本のジャズ喫茶や居酒屋の造詣が深く、
最近では青い目の吉田類と言われているとか、言われていないとか。
本来の専門である日本文学、しかもテーマを闇市にしぼった短編集。
「経済流通システム」「新時代の象徴」「解放区」という
章立てが利いている。
そこに編者の眼に適った作品が選ばれている。

朝の連ドラ『まんぷく』でも大阪の闇市シーンがあった。
非合法なのだが、金さえ出せばほしいものが手に入る。
一種の自由さと解放感があった。
礼賛するわけではないが。
以下短い感想を。

『貨幣』太宰治
100円札が主人公で100円札主観で流通する先での風景を描いている。
昔、お金は誰がさわっているのかわからないんだからと
叱られた人はいま中高年だろう。
100円札のリレーで世相をユーモラスにとらえる。
小説巧者だなあと思わせる。

『浣腸とマリア』野坂昭如
初期の作品だそうで後の町田康の先駆けともいうべき
饒舌関西弁文体はそれほどでもない。
ひょんなことから母親と寝て勤務先の社長とも寝て。
しまいには男娼みたいになってしまった若者。
性への強い衝動は、生への強い衝動。

『訪問客』織田作之助
ヘビースモーカーの作者を訪ねる3人の闇屋の話。
最初の男は作家志望でいきなり原稿を読んでくれとやって来る。
何作か持ってきたが、ダメな原稿だった。
音沙汰がなかったが、来訪。
今度は闇屋になったという。
次は女の闇屋。
煙草の押し売り。煙草以外にも売りつけようとする。
人気作家だから羽振りが良いと思ったのか。
身辺雑記風私小説なんだけど不思議な味わい。

『蝶々』中里恒子
海軍のエライさんだった夫が
戦後、居場所がなくなり生きる意欲を失う。
敗戦までは奥様だった妻は生きるために
夫の部下と屋台の焼き鳥屋を始める。
場違いな妻の上品な雰囲気と
焼き鳥を一心に焼く元夫の部下。
商売はうまくいき店を借りることができる。
はじめて生きがいを得た妻は
やがて美貌を持て余す。
編者曰く「彼女は闇市で蛹から蝶になった」と。
成瀬己喜男の映画みたいな作品。

人気ブログランキング