続アンソロ爺

 

 

確定深刻は確定深刻。何をかいわんや。

 

アンソロジー好きの老人をアンソロ爺ということにする。前にも書いたかも。

 

『短編ミステリの二百年 1 モーム、フォークナー他』小森収編 深町真理子他訳を読む。ミステリを読むのは好きだけど、偏って読んでいる。
ま、系統立てて読むこともないかなとは思うが、この本と出会った。
モームとフォークナーがミステリ? 何編か紹介。

 

「クリームタルトを持った若者の話」R・L・スティーヴンスン
お忍びで盛り場をうろつく「ボヘミアのフロリアル王子」と護衛役の「ジェラルディン大佐」。「クリームタルトを持った若者」から秘密クラブ、「自殺クラブ」へ案内される。その自殺の方法が…。退屈の余り、死までゲーム感覚とは。


「創作衝動」サマセット・モーム
「ミセス・アルバートフォレスター」はいわゆる純文学作家で優れた作品を書いていた。しかし、売れない。控えめな夫は彼女をサポートしていた。ところが、料理人の未亡人「ミセス・ブルフィンチ」と出奔、二人で暮らすという。夫は芸術家の妻よりも料理人の女性のほうがしっくり来た。二人とも大の探偵小説好きだったのだ。慰謝料代わりに商売の利益の3分の1を今後も与えると申し出る。
夫の稼ぎでは老後は心もとない。夫と料理人からミステリを書けばと言われる。
はじめは頭に来たが、書くことにする。そして売れる。鼻高々。「かのボードレールに強い影響を与えたポオは探偵小説を書いた」が決めてだった。

 

「アザニア島事件」イーヴリン・ウォー
英国領「アザニア島」は「アフリカにある架空の島」。駐留しているイギリス人は圧倒的に男性の比率が高い。そこへ「石油会社の代理人」をつとめるブルックス氏の娘・プルネラが来島する。色めき立つ男たち。

意外と活発な彼女は馬に乗って島の奥地へ。彼女は山賊に誘拐される。プルネラから何通かの手紙が届く。ケンブリッジから来た青年がそれは暗号になっていると。彼女が誘拐されたことはイギリス以下先進国で大騒ぎとなる。無事、彼女が無傷で発見されると騒動は収束。昔も今も変わらないメディアの野次馬気質を痛烈に揶揄している。


「エミリーへの薔薇」ウィリアム・フォークナー
主人公はミス・エミリー・グリアスン。父親は町長をつとめたこともあるお嬢さん。かつては白亜のお屋敷もいまでは色褪せた。父親の死後、彼女は引きこもり状態となる。老いた黒人が世話をしている。納税通知書を出しても返事が来ない。談判しに町長が屋敷を訪ねる。道路工事夫と恋仲に?彼女が薬剤師からヒ素を購入した。恋に破れて自殺かと町中の噂となる。ミス・エミリーは亡くなる。屋敷の足を踏み入れると「刺激臭」が襲う。ベッドにミイラ化した男性の遺骸があった。


「さらばニューヨーク」コーネル・ウールリッチ
生活に追われて強盗殺人を犯した夫とその妻。クールな文体でテンポよく展開する。
警察は犯人を捜している。盗んだのは50ドル札10枚。うち夫はスーツを新調する。
偽装、変装するため。夫婦は別々に逃げる。会えるようで会えない。ようやく会えて
マイアミ行の列車に乗り込む。フィルムノワールのような作品。


編まれた短編は新訳。しかも分厚い編者の解説付き。全6巻だから、ゆるゆる読んでいこう。江戸川乱歩は短編推理小説を「謎の構成に重きを置く場合」と「奇妙な味に重きを置く場合」と大別した。ぼくは断然、後者派だ。

 

人気blogランキング