ボツ

第6回「ビーケーワン怪談大賞」
発表となり、ぼくのは見事ボツだった。で、拙ブログに転載。ま、怪談じゃないかもね。
関係ないけど朝日新聞のサイトウミナコの文芸時評がおもろくないのは、
ネタもとの小説がおもろくないからなのかな。
それとも彼女の批評スタイルにマンネリズムを感じるからなのか。
「類型化じゃない」ものをご所望のようだが、
−その常套句がいちばん文芸評論では類型化していたりして−
ああた、そげんもんは、週刊誌や月刊誌では、
なかなか生れんとよ。って、なぜか九州弁もどき。


キャンセル料


死にたい、死んだら楽になれる。その思いは、
ここ数年ますます強くなっていった。知り
合いと立ち上げた会社は解散、借金だけが残
った。妻は昔の男と出奔、いいことが一つも
なかった。

ある晩、電車を待っていた。一日中営業に回
ったが、無駄足でYシャツは汗ですえた臭い
がしていた。終電間際の電車のライトがだん
だん大きくなってくる。それが手招きしてい
るような気がして、ホームから線路に飛び込
んだ。
一瞬のはずなのに、時間がゆっくりと経過し
ていく。なので、死ぬのをキャンセルしたく
なった。踏ん切りの悪さ、思い切りの悪さに
関しては自信がある。毎度のことだ。死ぬの
だってひと思いにいきゃしない。そんなこと
をいっている場合じゃない。
「すいませーん、死ぬの止めたいんですけど」
と叫ぶ。すると、ストップモーションがかか
り、体が停止した。
闇が一面に立ちこめ、何やら、誰かがいる
気配が。
「当日キャンセルなので本来でしたらキャン
セル料を100%いただくところですが、た
だいま、割引キャンペーン中につき50%い
ただきます」
と、慇懃な声がする。声は聞えるが、姿は一
向に見えない。
「そ、それは…」
「ま、いずれわかると思います」
突然、書類が現れる。黒く節くれだった指、
爪も異様に長い。
「ここに、拇印を押してください」
言われるままに、拇印を押す。

すうと意識が薄れ、気がつくと病院の寝台の
上。運良く助かったらしい。しかし、迫り来
る電車を除け切れず、腰から下は切断した。
これからは一生車椅子暮らし。本当だ。きっ
ちり、50%もってきやがった。病室の大部
屋の窓から光が射し込める。マジすか。と、
心の中で呟いた。


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