探し物は、何ですか―「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目には見えないんだよ」

オリジナル版 星の王子さま

『オリジナル版 星の王子様』サン=テグジュペリ内藤濯訳を読む。

 

てっきり読んだことがあると思って、その実、おしまいまでちゃんと読んだことがない本ってありますよね。ぼくにとっては本書がそうでした。中学校の国語の教科書に、本書の一部分が引用されていて、ウワバミの話でしたが。

 

作者の生誕100周年を記念して、何でも作者の手になる挿絵(さしえ)をオリジナル版にしたという文句に惹かれて買い求めてしまいました。

 

作者は航空郵便会社の飛行士で、アフリカの砂漠に不時着し、奇跡的に助かりました。そんなエピソードも本文中に出てきます。『イングリッシュ・ペイシェント』という映画の冒頭あたりで、アフリカの砂漠を飛行するシーンが出てきますが、作者もはるか上空から下界を見下ろしながら飛んでいると、くだらないことや、せせこましいことに悩んでいる人間なんて、確かに取るに足らない存在だと考えるのも、当然なのかもしれません。

 

全篇に流れているペシミスティック(厭世的)なトーンと天体・動植物の話、登場人物などは宮沢賢治の童話に似ているなと思いました。2人とも同世代人のはずです。

 

気づいたこと。
○挿絵は、繊細なというか淡いところまでよく再現されていて良い。
○文章は、総ルビにしてほしかった。いくら、対象が「小学校高学年~」となっていても。
(個人的なことですが、小学校二年生の子にプレゼントしようと思ったものですから)。
○訳が古くさい(ま、古色蒼然とした名訳なのですが)。
たとえば「たいそう」「とんきょう」「けんのん」…。新訳バージョンがあっても良いのでは。江國香織訳とか。

 

世間の評価に惑わされないで、サラな心で読んでみてはいかがでしょうか。


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