『なぜ通販で買うのですか』斎藤駿著を読む。
「猫は液体」という『通販生活』のCMが最近のお気に入り。わが家の猫トリオも、金魚鉢に入るだろう、きっと。
で、『通販生活』を出している『カタログハウス』の前社長が著した新書のレビューを
昔、書いていたことを思い出した。再録。
『カタログハウス』の前社長である著者が、日本の通販について私的に述べている。そういえば、この会社の前身である日本ヘルスメーカーというと、やはりヒット作「ルームランナー」と失敗作(?)「美顔器」を思い出す。
いわば生きた現代の通販史みたいな人なので、どうビジネスに結びつけていったか、成功談、失敗談、ある意味、内幕暴露的に、きわめて正直に書かれており、通販マニアでも、そうでなくても、もちろん広告関係者が読んでも、ベリーおもしろい。数々の語録から3つばかし、抜き書きしてみると。
語録1.「広告だけでは信用できない。信頼者を媒介して初めて広告を信用する」
じゃあ、なぜ『通販生活』は、タレントを起用してテスティモニアル型CM(有名人などに商品のメリットをアピールしてもらう広告手法)を展開しているのか。それは、まるっきり、やらせではなくて、実際に愛用している著名人に語ってもらっていると。
語録2.「発信者と利害関係の濃い情報ほど、信用性が低い」
単にスペック情報を訴求しても、いまや目利きの生活者にはすんなりとは、売れっこない。いかにして生活者が賛同する新しい使用価値、利用価値を見出すか。それはニッチでもあるし、優秀な販売員と同じ。
語録3.「好きな発信者からの情報は、信用性が高い」
これは単なる知名度のあるタレントよりも、主婦向け雑誌でなじみの素人出身のカリスマ料理研究家が「私も愛用してます」といった方が、比較にならないほど、アピールパワーを持つのといっしょの意味だろう。
『通販生活』のお手本は香具師(フーテンの寅さんのような人)であり、『暮らしの手帖』であり、『リーダーズダイジェスト』であるという。
作者がそれまで新聞で展開していた記事広告から現在のカタログにシフトしたのも、スペース的に「使用価値」が伝えにくいから。さらに売場として機能しないからなのではないだろうか。
『通販生活』が「1品目1機種の売場」に固執するというのは、たぶん外資のAE1業種1社の原則と同じ発想であるし、商品情報も「批評」や「書評」スタイルを踏襲しているのも前述の「信用性」にこだわるからなのだろう。なかなか困難だけど。
サンプルで出ているかつての記事広告を読んだけど、デザインレイアウトや言い回しが、なんか懐かしいスタイル。でも、このあたりが普遍的なストライクゾーンなんだろね。
いやあタメになった。オフライン広告だろうがオンライン広告だろうが、プランナー、ライターは絶対に読んだほうがいい。特に、若い人は。
ついでに。日本で最初に通販を仕掛けたのが、明治時代の農学者・津田仙。トマト、スイカ、キュウリなど洋野菜の普及及び頒布に寄与した。津田塾の創始者、津田梅子の父親だそうだ。
「通販生活 23年春号」 のCM「猫は液体」篇 より