コロナ、嵐、チェ―ホフ

 

子どもたち・曠野 他十篇 (岩波文庫)

子どもたち・曠野 他十篇 (岩波文庫)

 

 給付金10万円もらったら、貯金しないで何を買う。

本か、服か、靴か。酒か、スマホか。
家賃や生活費の一部であっという間に消えてしまう。
お金のことをお足というが、ほんとうに逃げ足が速い。
オリンピックに出たらメダルが取れるかもよ。
 
『子どもたち・曠野 他十篇』チェーホフ作 松下裕訳を読む。
チェーホフって子どもと女性のキャラがいいよね。
 
『子どもたち』
親など大人が出かけて子どもたちがゲーム(数字札)を始める。
そこに独自のルールをつくり楽し気に遊ぶ。しかし、お金もかけているので金に
執着心のある子どもは、熱くなって誰それがズルしたと言う。
母親のベッドで小さい子が寝てしまう。まもなく次々とベッドに撃沈する子どもたち。
「さあ、おやすみ!」やさしい締めの一文。
 
『ワーニカ』
靴屋に丁稚奉公に出された9歳の少年」ワーニカ。親方たちの留守に
祖父宛にクリスマスを祝う手紙を書く。書き出しは「クリスマスおめでとうございます」だが、中身は数々の虐待を訴え、迎えに来てくれることを懇願する。
教えてもらったポストに手紙を投函する。ワーニカ、切手が貼っていないと手紙は
届かないよ。
 
『曠野』
街道を走る「古めかしい幌馬車」。
商人と神父と「九つぐらいの男の子」、エゴルーシカが乗っている。
彼は遠くの中学校に入るため。神父は付添人だった。
馬車が町から離れ、曠野と景色が変わる。
郷愁の念にかられて彼は泣き出す。
車窓から流れる景色などの自然描写。
「はたご屋」での人々の交流などを丁寧に書いている。
エゴルーシカは出会った美しい「伯爵夫人」に淡い恋心を抱く。
途中、彼は羊毛を運ぶ馬車に同乗することになる。
それも彼にとっては冒険の旅。
長い旅は終わりとなり、エゴルーシカは「新しい、未知の生活」が始まる。
ロードムービーならぬロードノベル。

チェーホフの目の良さはもちろん、現実を描くことでの
隠蔽されている大衆の気持ちをあらわにする。
解説を読むと、この作品が発表されたとき、反応は芳しくなかったそうだ。
たぶん早すぎて石頭の作家や評論家は理解できなかったのだろう。