なぜか、なぜか

 

 『悪魔の涎・追い求める男他八篇―コルタサル短篇集』コルタサル著 木村榮一訳を読む。『秘密の武器』『遊戯の終わり』コルタサル著 木村榮一訳と『奪われた家/天国の扉』コルサタル著 寺尾隆吉訳と作品がダブっているものがあるのでダブっていないものを紹介する。

 

『夜、あおむけにされて』
夢と現実がどんどん錯綜していく世界。夢が現実を侵犯していく。夢おちなら「なんだ夢か」とか「夢でよかった」となるが、そうならないところがコルタサル

 

『南部高速道路』
高速道路は大渋滞。やむなくクルマから降りて話をする人々。渋滞はいつまでたっても解消しない。高速道路遭難かの思いを強くした頃、解消する。そこに広がる光景は。映画『ララランド』の冒頭シーンを思いうかべる。不吉なララランド。なんかSFっぽいんですけど。

 

『正午の島』
美しいエーゲ海の島に魅せられたマリーニ。島への移住を真剣に考えるようになる。島で海に飛行機が墜落するのを目撃する。中には顔なじみのCAが乗っているかも。海に飛び込む。マリーニにしがみついてくる男。楽園のような島が一瞬にして生き地獄と化す。

 

ジョン・ハウエルへの指示』
ピーター・ブルックに捧げる」と書いてあるが、文中にも演劇論がさりげなく述べられている。芝居を見に行ったライス。第一幕でジョン・ハウエルを演じた役者の代わりになぜか第二幕から舞台に立つことに。困惑しながら舞台に出たが、なぜか追われることに。なぜか、なぜか。不条理と悪夢。舞台を離れても芝居が続く。街頭劇だったのか。

 

『すべての火は火』
グラディエーターたちがバトルする古代ローマ時代のコロッセウムの炎とパリのアパルトマンのこじらせカップルの炎が重なる。タバコに火をつける二人。炎上するコロッセウム。揺らぐ炎、揺らぐ心。

 

『悪魔の涎』『追い求める男』のレビューはこちらで
『秘密の武器』コルタサル著 木村榮一

soneakira.hatenablog.com

 

『続いている公園』のレビューはこちらで
『遊戯の終わり』コルタサル著 木村榮一

soneakira.hatenablog.com

 

『占拠された屋敷』『パリにいる若い女性に宛てた手紙』のレビューはこちらで
『奪われた家/天国の扉』コルサタル著 寺尾隆吉訳
『占拠された屋敷』→『奪われた家』
『パリにいる若い女性に宛てた手紙』→『パリへ発った婦人宛ての手紙』

soneakira.hatenablog.com

 

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