三題噺 コルタサル ミケランジェロ・アントニオーニ チャーリー・パーカー

 

秘密の武器 (岩波文庫)

秘密の武器 (岩波文庫)

 

 『秘密の武器』コルタサル著 木村榮一訳を読む。


『母の手紙』
ルイスは兄のフィアンセ・ラウラを横取りして結婚。パリで暮らしている。
兄は死んだのに、ブエノスアイレスに住む母から時おり届く手紙には生きている様子が。兄がパリに来るという手紙が来る。

 

『女中勤め』
「家政婦は見た」ならぬ「女中は見た」。キャリア豊富な女中の視線を通してパリの上流階級の退廃さや陳腐さ、虚飾を暴く。やさしく接してくれたべべー氏の葬儀になぜか行くことになったが、そこでも。

 

『悪魔の涎』
写真家であるミシェルは、カメラを携えパリの街を散歩しながら気に入った被写体と出会えば、シャッターを切っていた。サン・ルイ島で「アベック」を目撃する。母と息子か。年の離れた恋人同士か。あるいは若いツバメか。妄想をふくらませる。隠し撮りをする。それがばれる。女性は抗議し、若い男はなぜか逃げる。無視するミシェル。「数日後、フィルムを現像する」。二人を撮った写真のできばえに満足。大伸ばしする。
凝視すると写真の風景が動き出している。こ、こわ~。ミケランジェロ・アントニオーニ監督がこの作品に感化されできた映画が『BLOW-UP 欲望』だそうだ。

 


BLOW UP - Official Trailer (1966)

 

『追い求める男』
ドラッグで亡くなったチャーリー・パーカーをモデルにした作品。モダンジャズ創始者の一人と言われる。ジョニ―は天才サックス奏者。演奏は独創的で素晴らしいが、性格や素行は最悪。ドラッグ中毒者。
ブルーノはジョニーの伝記を書くほど親しい間柄。しかし、評判の高い伝記も当人からみれば不満だらけ。ジャズの先頭を切るジョニーには常に新しいものを求められる。わかってはいるが、容易ではない。煮詰まった挙句、ドラッグに逃避する。
ジョニ―はオーバードーズで急死する。強さと弱さと脆さ。衝撃を受けるブルーノ。でも心の片隅で、ジョニ―は伝説の人となった。これで伝記は完結した。本も売れるだろうと。恐るべき作家の性(さが)。ジャズ小説集を編むならば、ぜひ入れたい一篇。

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『秘密の武器』
ピエールと恋人のミシェル。ミシェルの別荘に行くことになるが、ピエールに取り憑いた人が彼女のトラウマを思い出させる。いま、私をハグしているのはピエールではない。誰?頭がくるくるしそうな結末。

 

 

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