『海の仙人』絲山秋子著を読む。
宝くじがあたり、デパートの店員を辞し、敦賀の浜辺に戸建を購入し、リタイア生活を営む男が主人公(うらやましー)。
いきなり仙人が出てくるのには、面食らうが、そこに、「部長」というあだ名の女性やデパートの同僚の女性とのつきあいを軸に展開していく。
ロードノベルか。敦賀から金沢、新潟へ海を眺めつつドライブするシーンは、映像が浮かんだ。
いわば、寓話や神話ともいえる構造。でも決してハッピーではない。クルマネタやカーティス・メイフィールドネタなど小ネタもワラた。
いつぞやの『ユリイカ』でだったと思うが、作家、評論家2名による鼎談で、作者のことを、純文学の中に通俗小説を持ち込んだだけなどと厳しく評しているが、どうなんだろう。でも、それだけじゃない。
聖の中に俗があり、俗の中に聖がある。って屁理屈?
逆にエンターテイメント小説に純文学作品が紛れ込んでいても、下読み段階で恐らくはねられてしまうだろう。
登場人物のそれぞれの距離感が、今、なんだろうな。