『ロボット RUR』カレル・チャペック著 阿部賢一訳を読む。
世界初のロボットをテーマにした戯曲。
『ロボット』という言葉を考えたのは、「画家・詩人」の兄ヨゼフ・チャペックだったそうだ。チェコ語で「賦役」を意味する「robota」からの造語。
表紙の洒落たカバーイラストはヨゼフによるもの。
人間の労働のリプレースメント(代行)として開発されたロボット。
「RUR(ロッスム・ユニヴァーサル・ロボット社)」は、ついに量産化に成功する。
見た目も人間そっくりなヒューマノイドロボットは、人間のように長期間労働でも
文句を言ったり、残業代を請求したりはしない。
労働者は仕事を奪われた。AIの普及でなくなる仕事が多々あるらしい、いまと似ている。で、「ロボットを破壊する」行為に出る。
防衛手段として「ロボットに武器を与える」「ロボットは大勢の人を殺す」。
アシモフが唱えた「ロボット工学三原則」のようなものはなかったようだ。
兵器としての能力に目をつけたのが「政府」。
人間が行けない場所へも行けるし、殺傷能力も改良すれば高くできる。
やがて各国で独自の「民族型(ナショナル)ロボット」を造り出す。
結果として世界はロボットのものとなる。
彼らにとって創造主である人間は滅んだ。
ロボット政府は絶滅させてから重大な問題に気づく。
ロボットは自身でロボットを製造することができない。
「ロボットを増やすことができない」のだ。
ロボット製造に関して残された設計書から製造マニュアルなどの文書はなかった。
「(ロボット)の生命の秘密を知っている」開発スタッフも
亡くなってしまった。殺されてしまった。
創造主=神とするなら、神は死んだってこと。
生き残ったRUR建設部門主任アルクイスト。
彼からうかがえるロボットの支配する世界。
「ピノキオ」が人間の子どもになりたかったように、
ロボットも人間になりたかった。しかし成すすべがない。
すでに普遍的なテーマを追求しているという先見性の高さ。
いま読んでも違和感や古くささはない。
1920年に刊行されて今年はちょうど100年後。
世界中で『ロボット』という言葉が定着してさまざまな『ロボット』を見たら
著者はどう思うだろう。