科学 ケンケンガクガク

 

 

『科学とはなにか 新しい科学論、いま必要な三つの視点』 佐倉統著を読む。

久々に読む著者の本。科学をめぐる課題を大づかみにして解釈してくれる。
作者いうところの「俯瞰」。
視点を地上からではなく鳥の眼(バードビュー)にすれば、よく見える。

 

気づかされたところをつらつらと。

 

〇「東日本大震災で科学者への信頼感が低下した理由」

10年前の大災害。専門家が下した「放射線被爆量による健康被害リスクの解釈」。

「100ミリシートベルト以下の被爆量では大きな健康被害がないという科学的データをもとに、避難するべきか留まるべきかの助言を地域住民にしていた」

ところが、住民たちは具体的な「行動の基準がわからない」と。
科学的には正しいのだろうが、数値を生活情報に変換もしくは咀嚼しなければ。
専門家と国民との仲介を果たす存在が必要だと思う。

snsでも放射線被爆に関する情報は玉石混交だった。
エセ情報の方がインパクトが強い傾向にあるので質が悪い。

さらに「当時のアンケート調査」によると


福島第一原発事故によって科学者・技術者に対する信頼感が大きく低下した」

メルトダウンとわからない「放射線被爆量による健康被害リスクの解釈」。


とかく人は疑心暗鬼に陥りやすい。ましてやネットの時代では。

「インターネットの普及が、このような疑似科学反知性主義を加速する」

 

 作者はガンの民間療法を一例に挙げている。

 

〇「ダニング=クルーガー効果」

「ダニング=クルーガー効果」とは

「成績の良い人は自分のことをさほど高く評価しないが、成績の悪い人ほど自分は出来が良いと思うのである。知識が少ない人は、自分の状態を客観的に評価委したり俯瞰的に把握したりすることも難しい。しかも主観的には、自分は正しい(むしろ、自分のほうが正しい)と思い込む度合いも強い」

とっさに思いついたのが、トランピスト。

ネット上の「知のダークサイド」で「ダニング=クルーガー効果の強化ループ」が行われている。

 

〇「洗濯機の普及は主婦の労働を楽にしたか」

毎日の洗濯を機械がしてくれる。洗濯から主婦は解放される。という謳い文句につられてみたが、洗濯は自動化されたが、その前後の作業は変わらずどころか新たに増えたものもある。

「科学技術の生態系では、局所的に効率を上げても、別のところで不具合が生じることが少なくない」

〇「科学知を活用するために」

たとえば「新型コロナウイルス感染症への対応」で日本はうまくいっているとは決して言えないだろう。死者数が少ないのも結果オーライというか偶然のような気がする。作者は「(科学の)専門性」のみでは「立ち行かない」と。「異業種・異文化間での人と情報のやりとりが圧倒的に多数になっている今」、「将来に資するための新たな視点や枠組みをつくるためのものが、もっと必要だと思う」と。

 

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