親しき仲にも、ソーシャル・ディスタンス

 

ともしび・谷間 他7篇 (岩波文庫)

ともしび・谷間 他7篇 (岩波文庫)

 

 

朝、銀行と郵便局へ行くので三軒茶屋まで。
外に人があふれているので混んでるのかと思ったら
間隔を開けて整列したため。
ソーシャル・ディスタンスか。
スーパーマーケットへ寄ると、ここもそう。
割り込み得意のお年寄りもきちんと並んでいる。
 
ソーシャル・ディスタンス・ダンスとかつくって
パパイヤ鈴木が振りつけてYouTubeにアップしてくれないか。
 
新型コロナウイルス関連の言葉は
今年の流行語大賞を独占するかも。
東日本大震災のときは、地震津波原発事故など
災害が目に見えてつらかった。
つらかったけど、見えるからなんとかなった。
新型コロナウイルスは、来襲が見えない。
しかも奇襲だし。
見えないが近づいているのはわかる。
真綿で首を締められるような。
すでにぼくやあなたの体内に潜んでいる可能性も否定はできない。
 
『ともしび・谷間他七篇』チェーホフ作 松下裕訳を読む。
 
なんとなく続いているチェーホフ祭り。
人生とは何たるかをいやというほど味わわせてくれる。
以下何篇かの感想を。
 
『ともしび』
寂しさや静けさを表わすSE(音効)として代表的なものが犬の鳴き声。
冒頭に出て来る。舞台は鉄道工事現場のバラック
技師と技師の助手とわたし(ドクター)は、鉄道事業から高尚な話、恋バナなど
床屋談義ならぬバラック談義を広げる。無礼講ゆえ体制批判も。
人里離れた鉄道工事現場のバラック。かすかに見えるともしび。文明と欲望の象徴。
置いてけぼりにされたかのような喪失感と絶望。
 
『気まぐれ女』
タイトルどおりの女性の生態をとらえた作品。
9歳年上の医師と結婚した女性が主人公。風采の上がらない夫だが、仕事熱心。
何不自由ない暮らし。自宅でパーティを開くなどセレブ奥様を満喫。
ところが若いイケメンの画家と恋仲になる。二兎追う奥様。
はじめは蜜のように甘い恋もやがてうまくいかなくなる。
鈍感な夫にも勘づかれたようだし。その夫は病に倒れる…。
失くしてわかる大切なこと。このあたりは、ほんとにチェーホフはうまい。
 
『谷間』
谷間の村で食料品店を営んでいる男。儲け話には目がなく、高利貸しもしていた。
その家族の物語。長男は警察に勤務、家を出ている。耳の不自由な次男が店を手伝っている。
長男は独身、次男には器量も良く商才もある妻がいる。
家族や村の人々のつつましいがそこそこ幸せな暮し。
長男が「贋金」作りで「投獄」される。
「三年後」店の実権は、次男の嫁が握ることとなる。
この女性もまた一筋縄ではいかない。時には悪行も。でなければ商売の切り盛りはできないのだが。
「谷間」と表記されているが訳者解説によると

「川の氾濫によって出来た、川の両岸の平地のこと。その外側は「河岸段丘」になっていることが多い」