ヒノキ花粉、紫外線、黄砂。
別の仕事を抱えていると、まとまった本業の仕事が受けられない。
『少年が来る』ハン・ガン 著 井出俊作訳を読む。
「光州事件」をテーマにした作品。
「民主化」を求めて軍事政権の打倒をめざして
立ち上がった市民。
大人も子どもも男性も女性もデモに参加した人々は
アカとか反動分子とみなされ、軍、つまり当時の政権から
無差別的に弾圧される。
作者が「10歳の時に」知った光州事件。
市井の人々を主人公にして
その傷みを静かに書く。
作者がもう少し大きかったならば、
デモに参加していただろう。
正しいことをしようとまっすぐに立ち向かうと
大きな権力に完膚なきまでにたたきつぶされる。
同朋が、だぜ。
運よく生き延びた人たち。
肉体の損傷もひどいが、精神の損傷の方が
質が悪い。
暴力は相手を蹂躙させる愚劣なショートカット。
状況は異なるが、
若松孝二監督『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』を見たとき、
友人から借りた高野悦子『二十歳の原点』を読んだときと同じ心持ち。
他人事じゃない。
うろ覚えだった「光州事件」。
文字で書き綴られたレクイエム。
作者の思いがひしと伝わる。