香港の灰色の脳細胞

 

13・67

13・67

 

 

肌寒いせいか桜が長持ちしている。

 

『13・67』陳浩基著 天野健太郎訳を読む。

 

舞台は香港。香港警察のベテラン“ホームズ”クワン警視
ポアロでもなんでもいいけど。フロスト警部ではない)と
ロー警部など弟子にあたる警察官が犯罪に取り組む短編集。
おおざっぱ。

 

最初の『黒と白のあいだの真実』でトリコになる。
末期がんで病床につきながらも
コンピュータ経由で「Yes」「No」と反応して
犯人をしぼっていくクワン警視。
安楽椅子探偵ならぬ病床探偵。
絡みに絡んだ謎を解明する。犯人は意外な人だった。
最後にもう一つネタ明かしをするが、見事。

 

インファナル・アフェア』や『男たちの挽歌』など
香港ノワールにはまった人なら気に入る。

 

香港は新婚旅行で行ったきりだが、
そのときのかすかな記憶をたどって読む。
スターライトフェリーは乗った。
地下鉄はどうだったか。

 

警察という組織。
出世しか眼中にない者。
悪い奴らをしょっぴきたい者。
地位や身分が向上するならばブラックやグレー企業でも
転職を厭わない者。

 

香港マフィアと芸能界の癒着。
警察内部による事件の隠滅。
職場恋愛のもつれ…。

 

派手なカーアクションや
誘拐シーンもあったりして
エンタメ度もバツグン。

 

中国返還前後の混乱する香港など
当時の空気を取り込んで
リアリティを出している。

 

捜査の合間につまむ飲茶や料理も本当にうまそうで、
空腹時には読まないように。

 

クワン警視はイギリスで研修を受けたエリート。
なのに、出世よりも後身の育成を選ぶ。

 

年代が異なる6つの短編は、それぞれ長篇になりそうな話。

クワン警視はシリーズ化になるほどの
魅力的なキャラ。

 

な、なんと映画化権はウォン・カーウァイが取得したとか。
世界がぴったりだけど、ほんとうに完成するかどうか。
したら、もちろん見に行くけどね。

 

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