わが家にロボットが来る日―ロボティクスの可能性

 

 

『ロボット21世紀』瀬名秀明著を読む。

 

あなたは、ロボットというと、どんなロボットをイメージするだろう。世代により異なるかもしれないが、大半の人は「鉄腕アトム」と答えるだろう。一種のすりこみかもしれないが、やはりロボット・イコール・ヒューマノイドロボット(人間協調・共存型ロボット)となってしまう。

 

擬人化されたロボットは、ミッキー・マウスなどのキャラクターと同様に親近感を覚えてしまうといったことが記述されているが、確かにそうだ。ぼくも、作者と同じくホンダの二足歩行ロボット「アシモ」のTVCMを見て、いたく感動したクチである。

 

今のところ、ヒューマノイドロボットは、コミュニケーション&エンタテインメントが目的であるが、将来的には「福祉と介護現場での利用」や、「原子力プラントなどの保守点検作業や災害調査、建築作業」なども期待されているそうだ。「ブレードランナー」のレプリカントの世界が現実になったりして。

 

21世紀には、ロボットは工場から家庭へ進出する。そのうち、日本お得意のいたれりつくせりの家電感覚のロボットが、「小間使い」や「自分の身体の代わり」として、さまざまなライフシーンで活躍する時が来るだろう。

 

そして、ロボティクス(ロボット工学)の発展により、たとえば「ヒューマノイドの行動や人工知能」などロボットを通して、これまで見えてこなかった人間が見えてくるという点も、見逃せないことだ。

 

「ロボット工学のもとに生命科学情報工学認知科学などが集結すれば、(人間の創造性などの)巨大なテーマを巨大なまま、総合的なシステムとして扱うことができるようになれるかもしれないのだ」。作者はサイエンスとエンジニアリングの領域を横断するのが、ロボティクスなのだと述べている。

 

ロボット王国・日本の現状を研究開発者にインタビューを試み、あまねく紹介、ロボティスクスの可能性にまで言及している。ヒューマノイドばかりに特化しているわけではない。


「機械に『心』は宿るか」「ロボットとの恋は可能か」などの章も楽しく読める優れたルポルタージュである。


「日本のロボティクスは豊穣である」と、作者はあとがきで記しているが、一読すれば、その豊かさが理解できる。ぼくのような文系の人間にも、また、理系の人間にも、面白い広くかつ深い労作である。

 

最後に、本書をエスキスにして、作者なりのヒューマノイドロボットをテーマにした小説を、ぜひ近いうちに、読んでみたい。それこそ押井守の『機動警察パトレイバー』に勝るとも、劣らぬようなものを。勝手なお願いなのだが。


人気blogランキング