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「北風と太陽」ではないが、昨日着込んだ服を
今日は一枚、一枚脱いでいく。
ゆっくりとプランニング。
『虚無回廊』小松左京著。全3巻をやっと読み終えた。
未完の大作。
「直径1、2光年、長さ2光年」の「巨大人工天体(SS)」を「探査」する話って、
スケールでか過ぎ。風呂敷広げすぎて結局、
うまく畳めなくなってしまった状態。
そのあたりは、手塚治虫の『火の鳥』にも似ている。
でもすごい。翻訳物ハードSFだと理論はわからなくても、
なんとなくついてはいくものの、
ストーリーについていけなかったりするんだけど、
小松左京は理論が、うまくエンタテイメントとして咀嚼されている。
「巨大人工天体(SS)」についての説明。
「SSの基本構造は、たまたま大宇宙のソフト相転移の形成時に、
泡(バブル)構造の中心核に、「孤児」のような形で形成された「虚宇宙」と
「実宇宙」の間を、はるか何十億年後につなぐ性格を与えられた
「回廊(コリドー)」の構造だった。
−略−この二つの、基本的性格の異なる宇宙が、実は関係があり、
現在もなお、相互影響をあたえあっているしるしとしての、
反粒子や、ワームホールだけでなく、何十億年のちの、
「虚・実双宇宙」の「双進化」−新しい段階における「相互関係」の
出現の証しとなるべき方向へむけての「進化」だった」
しびれる。
なんだかシャム双生児を想像してしまう。
作者は漫画家のキャリアもあるから、
たぶん映像が明確に浮かんでいたのだろう。
作者はSFとバルザックのような大きな物語の融合を目指していたようだ。
巻末の瀬名秀明の解説が秀逸であることも付記しておく。
瀬名はダンテの『神曲』と比較しているが。
書評とかほんと、いいんだわ〜。
瀬名秀明が『虚無回廊』の完結篇を書いたら、どうなるんだろう。