『言語の本質-ことばはどう生まれ、進化したか-』今井むつみ著 秋田喜美著を読む。
「子どもはどのようなことばを最初に覚えるのだろう?どのように言語が記号のシステムであることを理解するのだろうか?どのようにこのような抽象的な意味を持った巨大なシステムを習得していくのだろうか?」と、「はじめに」で問いを投げかけている。
そしてそれは「「記号設置問題」*へとつながってくる」。そのキーとなるのが「オノマトペ」だと。
そも欧米では「オノマトペは擬音語」とされているが、「日本語では擬態語」であるそうだ。では、「オノマトペは言語」なのか。それが「言語とは何か」を考える端緒になると。言語の最大の機能は「コミュニケ―ション機能」だ。オノマトペをまじえた会話は、内容をより具体的にし、受け手側にも強く届く。
この本から具体例を引用。
「雷が光った」
よりも
「雷がピカッと光った」
という方がリアリティが増す。
子どもはオノマトペを通してことばを学んでいく。そして「アブダクション(仮説形成)推論」を行なうと。
「ヒト乳児が生まれながらに対称性推論をするバイアス(「対称性バイアス」)を持っている」
「p ならば q である」ときに「q ならば p である」もと仮定してしまうバイアスだが、ヒトだけにしかみられないものだとか。これを身につけることで「記号設置問題」をクリアすると。
「人間は、アブダクションという、非論理的で誤りを犯すリスクがある推論をことばの意味の学習を始める以前からしている。それによって人間は子どもの頃から、そして成人になっても論理的な過ちを犯すことをし続ける。しかし、この推論こそが言語の習得を可能にし、科学の発展を可能にしたのである」
オノマトペというと宮沢賢治の童話や草野心平の蛙の詩が頭に浮かぶ。また絵本などにも多用されている。オノマトペ、なめんなよ。
わくわくしながらページをめくって、読み終えたとき、目の前がぱあっと広がった気がした。
*「AIは一見、ことばの意味が分かり、人間が言語で言わんとすることを理解しているように見えても、実は一つ一つのことば(記号)の意味を理解しているわけではない。意味を理解しない記号を別の、やはり意味を理解しない記号で置き換えているだけで、どこまで行っても、結局、人間が言語で伝えようとする本当の「意味と意図」は理解できない、というのが「記号接地問題」です。
つまり、AIのなかでは、単語一つ一つが、経験や感覚に対応づけられていない――身体感覚に「接地していない」――状態にある。
つまり、本当は単語一つ一つの「意味」を理解していない。にもかかわらず、あたかも理解しているようにふるまっている、ということです。」