03年生まれ、金子文子。95年生まれ、高島鈴

 

 

『布団の中から蜂起せよ-アナーカ・フェミニズムのための断章-』高島鈴著を読む。

 

作者がいう「アナーカ・フェミニスト」とは、「アナキストというだけでも、フェミニストというだけでも十分ではない」からだそうだ。ただし意味するものはフィックス(固定化)していない。つーか、フィックスできないと思う。

 

「ゴリゴリの左翼家庭」に育った作者は大学でジェンダーアナキストに興味を覚える。栗原康の『狂い咲け、フリーダム』で「大正時代のアナキスト金子文子を知り、衝撃を受ける。ただし、栗原のフェミニズム観に対しては批判的だが。

 

金子文子の生涯についてはこちらを。

 

金子文子(かねこふみこ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

いわば「アナーカ・フェミニスト」の雛形を文子にみるが、そのヴァージョンアップ、改良を自身でしていこうと。

 

「文子は主体性の発揮こそが「生きる」ことであると位置づけ、その結果として肉体が滅びようと、それは生の肯定なのだと結論づけている。だが私は己のために行動する自由をどのように奪われていようと、その阻害された生を生き延びる道こそ革命に通じると信じている」

 

もののけ姫』のキャッチコピー「生きろ。」(by糸井重里)だね。

 

とはいえ、この本は論考でなくエッセイ集なので、読みやすいことは読みやすい。
タイトルこそ勇ましいが、一連の韓国フェミニズム小説にもつながるものもある。
面白かったところを紹介。

 

〇「安丸良夫という近代史研究者が提唱した概念」で「通俗道徳」という考え方について

 

「簡単に言えば「頑張れば報われる」という思想です。―略―しかし「頑張れば報われる」という発想は、裏を返せば「報われていない人は頑張っていない」ことも含意してしまいます。―略―本来さまざまな条件に規定されて自力ではどうにもならないはずのものごとが、みんな本人の努力不足で説明されるようになった。つまり通俗道徳の受容とは、自己責任論の受容だったわけです」

 

「自助」とかだよね。ある意味、強者の思想。LGBTsを認めないオヤジの思想。

 

〇「深いところに恐怖を持っていて、広い範囲のものを丁寧に見ようとしてしまう、こういう人が統合失調症になりやすいという考え方があるのです」

 

作者の主治医の言葉。なるほどなと思った。作者は鬱病を患っていたが、コロナ禍により悪化、統合失調症に罹ってしまう。


〇「映画『パラサイト 半地下の家族』を見たときも、真っ先に気になったのは
「なんでこの家族は崩壊しないんだろう」ということだった」

 

確かに。でも、そこがこの映画の肝なのではないだろうか。家族との共同生活での暮しにくさ。著者が1人暮しを始めての解放感などなどを述べている。ぼくも、めでたく予備校生となって東京で1人暮しを始めた頃を思い出した。家族、とりわけ父親にマウントを取られていた18年間。

 

このエッセイをまんま音声化してポッドキャストで配信したら、本を読まないコたちにも案外ウケるかもしんない。テーマとしては「シスターフッド」「ルッキズム」「家族」とか。


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