サンジェルマン・デ・プレのU2(憂鬱)

そして僕は恋をする

『そして僕は恋をする』監督アルノー・デプレシャンを見る。

 

約3時間。フランス映画。字幕スーパーを追うだけで疲れる。→寝てしまうZZZ。ぼくの場合、かつてはヌーヴェルバーグ小僧だったんだけど、いつから駄目になったんだろう。あ、エリック・ロメールからだ。パトリス・ルコントはエッチだから寝ない!

 

大学で哲学の講師を務めている29歳の男が主人公で、彼に関わる3人の女性との恋の話。10年来つきあっているA子とは、別れようとして別れられない。今度こそ、別れようと固く決めている。B子は、親友の恋人。C子は、彼女の方から、彼に迫ってきた。
元々はとても優秀な学生だった彼なのだが、博士論文かなんかをなかなか書き上げられずにいる。かつて共著で本を刊行、その後疎遠となっていた友人は出世して論理学の専任講師で母校に戻ってくる。ちょっぴり神経も病んでいた彼は、3人の女性の間でウダウダしているうちに、鬱のドン底から這い上がり、ちったあ前向きに生きるようになるというストーリー。

 

やっぱり饒舌、登場人物も、ナレーターもマシンガンのようによく喋る。1人の時も、延々とモノローグしている。すべてに関して理屈っぽい。というよりも、グチグチ、グズグズ、言い訳している。一方、彼を取り巻く女性たちは、きっぱりとさばさばしている。逆じゃないかと思われるかもしれないが、実際のところ、周囲を見回しても、そうでしょうが。

 

その自己韜晦(とうかい)、自己憐憫(れんびん)ぶりが、うん、わかる、わかると肯くまま、見入ってしまった。まるでこっ恥ずかしいトレンディドラマのようなタイトルだが、中身はもっと恥ずかしい。

 

男のエゴむき出しなのだから。会話も、まるで思想書を朗読しているようなもので、ブジースノッブおフランス通のあなたには、フィットするはず。あるいはサリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』が好きなあなたにも、しっくりくるはず。女の子たちのファッョンがなかなか洒落ている。ぼくは彼同様、B子に一目惚れした。

 

29歳(主人公の年齢)というのは、若者から大人に離脱する時期にあたり、心身の均衡を保持するのが結構難しい頃ではないだろうか。先もそろそろ見え出すしね。唐突すぎるが、なんか成瀬巳喜男川島雄三と通じるものがある。決してすがすがしくはないのだが、見終わってから一種のカタルシスを感じるのはなぜなんだろう。


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