異形の王国―みな、ひねくれていて、不気味で、変で、可笑しい

オイスター・ボーイの憂鬱な死

オイスター・ボーイの憂鬱な死』ティム・バートン著を読む。

 

いっときTVCMのプランニングの仕事で随分ツタないラフコンテを描いていた。広告代理店やTVCMプロダクションで打ち合わせをする時、何人ものプランナーや演出家が同席して各自、自分の持って来たラフコンテを説明する。

 

打ち合わせは好きではなかったが、他の人のラフコンテを見るのは大好きだった。企画の良し悪しというよりも、その絵自体を眺めるのが楽しかったからだ。たいがいは、シンプルな線画なのだが、カット割り、キャラクター、ストーリー展開などがみなそれぞれに個性的だった。自分の伝えたいことが一枚のコピー用紙に、サラサラと描かれていた。

 

コンテといえば、やはり映画監督の描くコンテになる。黒澤明フェデリコ・フェリーニが達者なコンテを描くので有名だが、ま、和田誠のラフコンテなんて、まんまイラストなのだが、当り前か…。ぼくは、ティム・バートンのがダントツに気に入っている。

 

彼は映画監督になる前、ウォルト・ディズニープロダクションでアニメーション監督をしていた。「シザーハンズ」、「バットマン」シリーズ、「マーズ・アタック」、「スリーピー・ホロー」まもなく公開される「猿の惑星」もあるか。数々の作品の中で「ナイトメア・ピフォア・クリスマス」が忘れられない人に、ぜひ本作をおすすめしたい。ガシャポンで「ナイトメア・ピフォア・クリスマス」のフィギュアを少しだけコレクションしたこともある、そんなあなたにもぴったり。

 

本書は、イラスト集よりも、イメージコンテ集と述べたほうが適切だと思う。彼の描く世界は、どこか物悲しく、切ない。また、キャラクターもほとんどいっていいくらい異形であり、ディオニソス的だ。でも、それって、人間のふだんは隠蔽されている本心が、剥き出しになった表情であると、とらえてみてはどうだろう。

 

オイスター・ボーイ、スティック・ボーイ&マッチ・ガールをはじめとして、この本に出て来る登場人物たちは、みな、ひねくれていて、不気味で、変で、可笑しい。でも、そんなものだと思わない?彼の描くキャラクターの輪郭線と陰影や動きを与えるために丹念に走らせた斜線が、見事に、彼の映像世界を物語っている。

 

もしやすると、一枚絵の強さとストーリーのはかなさ、残酷さは、映像を凌駕しているかもしれない。

スティック・ボーイ&マッチ・ガール

 

 

 

 

 

 

 

オイスター・ボーイ

 


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