「しゃがれ声」の男、遺体そばの139足の古い靴…。ツイスト博士、参上

 

 

『死まで139歩』ポール・アルテ著 平岡敦訳を読む。

 

アラサー間近のネヴィル。文武両道に秀で、法律を学ぶ。しかし自分の将来が弁護士としっかり決められずに、ふらふらと生きている。遺産で小銭も入ったし。今夜もパブで冒険旅行を夢見ていた。ふと気がつくと見目麗しき女性が。たちまち、ほの字のネヴィルくん、あとを追う。

 

「しゃがれ声」の男に叱責され、彼女は泣いていた。それを覗き見していた。なぜか彼女から謎の伝言を言われる。人違いをしている。伝言の内容が皆目見当もつかない。ネヴィルくん、探偵業にも興味があるのだが、はてさて。

 

一方、その頃、わがツイスト博士とハースト警部に元船員のジョン・パクストンから奇妙な相談事が持ちかけられる。メッセンジャー、手紙を運ぶ仕事を依頼されたが、どうも怪しい。手紙を勝手に開封したら白紙だった。男は、白紙の手紙を運んでいた。なぜ。コナン・ドイルの『赤毛組合』を思い浮べる。


男に雇い主の特徴を伺うと「しゃがれ声」だった。彼女のことが忘れられないネヴィルくん。伝言の謎解きにかかるのだが、頭上に大きな疑問符がのしかかれる。


謎の伝言で伝えられた場所でパクストンは殺されていた。そのそばに6足の靴が。

 

場面は変わってロンドン近郊にある自然豊かな村。引退後、そこで悠々自適生活を楽しんでいた元大佐のマカリスターと元敏腕警部のウィンズロウ。ウィンズロウは姪のブライディと暮らしていた。彼らは「古きロンドン友の会」の会員でもあるのだが、2度観劇した劇場で2度とも窃盗事件が起き、高価な宝石が盗まれる。そこに関連性はあるのか。

 

ロンドン近郊の村で亡くなったルイス・フィディモント。埋葬されたはずなのに、遺体が家に舞い戻っていた。その周囲にはなんと139足の古い靴がある。ゴミ屋敷ならぬ古靴屋敷。で、例によって鍵は中からかけられ、埃まみれの室内には足跡一つなし。


きっかけは警察への通報だったのだが、声は、またもや「しゃがれ声」だった。難事件に立ち向かうツイスト博士とハースト警部。

 

ネヴィルくんがパブで見かけた女性の正体がわかる。人妻だった。最初はしらを切っていたが。結構、激しい火遊び。ドロドロの恋愛関係。彼は節操もなくウィンズロウの姪のブライディに惹かれる。ブライディもまんざらでもなく。おいおい。ツイスト博士に刺激され、彼なりの推理を立てたりするが。

 

酒場でのネヴィルくんへの博士の本格ミステリの講義。作者の本音が露呈していると思われるんで一部引用。

 

ネヴィル「でも本格ミステリは、戦前に比べて読まれなくなっているのでは?」
ツイスト「本格ミステリは死に絶えちゃいないとも。そう簡単に絶滅はできない。現代の高名な批評家たちのなかには、そんなことをたくらんでいる
連中がいるようだが。いやはや、本格ミステリの話題が出たら、笑って聞き流すのがよしとされている。昔はもてたと自慢する若作りの老人の話を、
眉に唾して聞くみたいにね」

 

「しゃがれ声」の男の正体や139足の古い靴、密室トリックの解明など、かなり強引な着地だが、何せおもしろいんで。

 

「しゃがれ声」の男ってロッド・スチュワートならセクシーだが、天龍源一郎だったら、判読不明だ。それはそれでミステリアスかも。

 

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