ケレン味増し増し―ツイスト博士、本格ミステリのケレン味は、うま味?くさ味?

 

 

『虎の首』ポール・アルテ著 平岡敦訳を読む。

 

スコットランドでバカンスを堪能したハースト警部。復帰を待ちかねたかのようにスーツケースに切断された女性の手足が収納されたという奇怪な殺人事件が連続して起こる。最初はロンドン近郊のレドンナム村で。次は大胆にもロンドン駅の構内で。


お手上げ状態の警部は、フランスでのバカンス帰りのツイスト博士に早速、捜査協力を依頼する。博士がスーツケースを開けると、ここにもバラバラ死体が…。

 

レドンナム村とロンドンと入れ子スタイル。いつも以上にケレン味たっぷりに話は進行する。

 

さて、レドンナム村。ここで新たに密室殺人事件が起きる。殺されたのは退役少佐のジョン・マクレガー。彼と同じ部屋にいて大怪我を負ったクライブは元少佐がインドから持ち帰ったいわく付きの杖の祟りだと。杖の頭部には「虎の首」と呼ばれるブロンズ像がついていた。少佐はインド魔術や杖をあやしく語っていた。

 

少佐の甥であるテニスプレイヤーでプレイボーイであるジム・マクレガー。金遣いも荒く、まっ先に容疑がかけられる。

 

クライブの恋人、エスター・ダブは宝石店のオーナー。二人はレドンナム村にひと夏の住まいを借りた。

 

パーシヴァルとキャロル夫妻。キャロルの父親は銀行を経営していた。パーシヴァルはその銀行の社員だった。元々は名門の一族だったが、今はすっかり落ちぶれ、彼は母親にお家再興を嘱望され厳しく育てられた。その優雅なたたずまいや仕事ぶりは、キャロルのハートを射抜く。逆玉婚で二人はレドンナム村に居を構えた。

 

突如、彼女の父親が自動車事故で亡くなる。若き銀行オーナーとなったパーシヴァルは仕事に励む。キャロルは、彼のハードワーカーぶりに頼もしさを感じていたが、寂しさも隠せなかった。ところが、彼が励んでいたのは仕事だけではなかった。母親の過度な期待からなのか、彼の心は少しづつ歪んでいった。

 

そしてロンドン駅に置かれたスーツケースに詰められていたのは、ジェニー・オルセン。いわゆる夜の女性だった。

 

謎の闇、心の闇、暗闇。「ビンゴ!」と叫ぶツイスト博士(実際は叫んでいないが)。最後にケレン味たっぷりに秘密が明かされる。おいおい、そんなことわからんかったんかとつっこんではいけない。天知茂主演のTV映画『明智小五郎』シリーズでも、どっかのおじさんが、ゴム製かなんかの仮面をはがすと明智小五郎になる。ああ、知らんかったという態度で読み進もう。

 

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