3人のペスト医師、メルツェルの将棋指しなど妖しげ度、怪しげ度、100%

 

 

『七番目の仮説』ポール・アルテ著 平岡敦訳を読む。

 

冒頭から妖しげ、怪しげ、全開。真夏のロンドン、午後10時過ぎ。巡回に出たワトキンス巡査の眼に映る奇怪な影。「鳥の仮装」か。さに非ず。ペスト医師だ。コスプレ?
かつてロンドンがペスト禍時の医師のいでたち。気を取り直して巡回を再開すると、今度はゴミ漁りをしている男が。ホームレスかと思って職質すると、ドクターだと名乗る。念のためゴミバケツを開けると空だった。自称ドクターが帰った直後に、残りのゴミバケツを点検すると、なんと死体が入っていた。

 

死体は、ミンデン夫妻の下宿人、デビット・コーエンだった。夫妻の元に3人のペスト医師が現れ、コーエンはペストに罹患していると。彼らがコーエンを担架で搬出しようとしたら、コーエンは煙のように消えてしまった。

 

ここで、ツイスト博士とハースト警部の出番となる。3人のペスト医師の正体は。なぜ、コーエンは殺されたのか。

 

博士が何色かの脳細胞をフル回転させていると、ゴードン・ミラー卿の執事というピーター・ムーアが訪れる。高名な劇作家でもあるゴードン卿と有名な俳優ドナルド・ランサムが決闘することをたまたま耳にしてしまったと。

 

ゴードン卿をラドクリフという男が訪問する。彼は不幸にも溺死したゴードン卿の妻・アンナの従弟だという。夫人には愛人がいたと。しかも、ラドクリフはアンナの死に不信感をいまも抱いていた。

 

ゴードン卿とドナルド・ランサムは劇作家、俳優の関係だが、親友でもある。ゴードン卿の義理の娘のフォレストは、現在、かなり年上のドナルドと付き合っている。気がかりでない。こじれた関係。フォレストとコーエンはかつて恋人だったとか。

 

フラジャイル、こわれもののようなフォレスト。

 

そして執事ピーター・ムーアが物盗りと間違えられてゴードン卿に射殺される。口封じ?

ゴードン卿とドナルド・ランサムと親交のあった奇術師スタンリー・コスミンスキーが誰かに刺されて救急搬送される最中、事故で亡くなる。自宅を捜索すると200ポンドもの大金が出て来た。その出所は。

 

ポーの小説でおなじみの「メルツェルの将棋指し」などをコレクションしているゴードン卿の趣味の部屋。その手のものに目がないツイスト博士と意気投合する。

 

畳みかけるように事件が勃発する。ツイスト博士とハースト警部は解決に悪戦苦闘する。

 

ゴードン卿がなぜ義理の娘フォレストを溺愛しているのか。最後の一行で謎が氷解する。後味は決して良いものではないが。

 

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ペスト医師

 

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メルツェルの将棋指し


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