10年ひと昔というが。思い出すと喪失感と失望にさいなまれる。
なんで読書に逃げる。ベイビー、逃げるんだ。
『大きな森の小さな密室』小林泰三著を読む。
7篇のテイストの異なるミステリ。
目次にタイトルの後にミステリのカテゴリーが書いてある。
著者の作品ではおなじみの本音女子新藤礼都や自作PC派、神出鬼没の徳さんなど
クセの強いキャラクターが「探偵」に扮する。
感心したり、ゾッとしたり、失笑したり。
ちょっとだけ、さわりを。
「大きな森の小さな密室 犯人当て」
金貸しの男が別荘で殺されていた。密室殺人か。犯人は。
「氷橋 倒叙ミステリ」
女性作家と担当編集者の恋の顛末。氷は昔から刺せば溶けて証拠が残らない凶器とかだが、ハデに仕掛けた。
「自らの伝言 安楽椅子探偵」
コンビニでのアルバイト女子3人のかみ合わない会話がメイン。そっか、「水からの伝言」の揶揄がモチーフか。
「更新世の殺人 バカミス」
見つかった遺体。なんと「死亡推定時期は150年前」だった。超限探偵∑が登場するが。
「正直者の逆説 ??ミステリ」
丸鋸教授と助手がとてつもない辺鄙な別荘に行く。殺人事件が起きていた。カテゴリ―に括れないミステリ。
「遺体の代弁者 SFミステリ」
前向性健忘の田村二吉は博士に自身の海馬に「被害者の記憶」をとどめている海馬の一部を移植させられる。そうすれば「その人間が被害者の記憶を思い出してくれる」。デビッド・クローネンバーグの映画のよう。
「路上に放置されたパン屑の研究 日常の謎」
「同じ場所の17か所にパン屑が落ちていた」なぜ?田村二吉と徳さんが謎を解く。つーか、抜群のナンセンスもの。